
山でテント泊をしながら、一眼カメラ(レフ機やミラーレス機)や三脚を持ち歩いて風景写真を撮影をしたい!とお考えになっている方は少なくないのではないでしょうか。
しかし、体力が心配なんて方もいらっしゃる方も多いと思います。
よくありがちな登山の筋トレ紹介にある、腕立て、腹筋、背筋、スクワット、ランをやればいい、だけじゃイメージつかないですよね。そこで普段からワークアウトと登山をやっている私の視点から以下の趣旨で今回の記事を書きます。
・どこのどんな筋力や持久力が必要なのか
・どんな状況でその筋肉を使っているのか
・ワークアウトのメニューは何をやったらいいのか
さて、今回想定しているのは、テント泊装備で登山をし、一眼カメラに交換レンズ、三脚を持って撮影をしたい男性です。想定している荷物の重量は20-25kgくらいですね。
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もくじ
テント泊装備で一眼カメラで風景の写真を撮影するということ、それは目的地まで荷物を運搬できる能力を備えているということ
山で風景の写真を撮るということは目的地まで荷物を背負って歩いていかなければなりません。目的地へ行くまでには稜線に出るまで山の斜面を登らなければなりません。登山をしなければならないのです。必ず。
先ずは前提条件として荷物を運べるだけの基礎体力が必要になります。基礎体力がなければ何かを諦めなければなりません。例えば、三脚は持って行かずに星撮りは諦める、一眼カメラは持って行かずにコンデジで済ます、テントは持って行かずに自由気ままな夜を過ごすことを諦める、などです。
基礎体力さえあれば諦めなくて済むんですよ?
テント泊縦走装備+カメラ機材を運ぶための基礎体力とは何か?
基礎体力とは何か?曖昧ですね。私は以下のように定義しています。
・坂を何時間登っても呼気が限界に達しない心肺機能があること
・ザックを何時間背負って歩いても上体がブレない体幹部(腹筋と背中の脊柱起立筋)の筋力と持久力があること
・何時間も歩行できる脚力と持久力があること
ほとんどの登山では上記の3つの能力が当てはまります。ここに岩場歩きや鎖場歩きが入ってくると、握力、体を引きつける力、両手で岩を押しながら上体を支える筋力が必要になってきます。
あなたは登山口から稜線に出るまでに太腿の前(大腿四頭筋)、後ろ(ハムストリングス+大臀筋)を使っている

あまたは稜線に向かって山の斜面を登っている時、太腿の前(大腿四頭筋)を使っています。荷物の重量があるほどこの部位の筋力が必要になります。自重+荷物の重量で坂を登る筋力、加えてその動作を持続できる筋肉の持久力が必要になります。動作中の膝の角度は45〜65度の範囲に収まることが多いのではないでしょうか。この角度では大腿四頭筋を使う割合が多くなります。
以前に単に登山をしただけではお尻の筋肉は使わないという趣旨の記事を書きました。その理由は膝の角度を大きく曲げるシーンでなければ太腿の前(大腿四頭筋)を中心に使うことになるからです。しかし、段差がある場所を一気に跨ぐシーンではお尻の筋肉(大臀筋)を使います。
山の斜面は一様ではなく時には大きな段差を登らなければならないことがあります。例えば、木の根が張り巡らされている地形での急登、あるいは大きなガレ場です。こんな場所では大腿四頭筋に加えお尻の筋肉(大臀筋)を使います。膝の角度としては90度以上になります。普段、お尻の筋肉を使ってない人にとっては踏ん張りがキツイ場面いなります。
意外と見過ごすのが緩い斜度の登りです。普段なら何気なく歩ける斜度でも何時間も荷物を背負って登ってきた身にはこたえることもあります。灼熱の太陽の日差しがあれば尚更ね。緩い斜度では後方へ蹴り出して前進するための推進力を得ています。走ることをイメージするとわかりやすいですね。こんな場面では太腿の後ろ(ハムストリングス)を使っています。
登山口から稜線に出るまでに必要な脚のワークアウト

やっぱりスクワットでしょ。まぁ、ここまで重くしてやる必要はありません。しかし、テント泊装備+カメラ機材を持ち運ぶなら自重だけのスクワットをやっただけじゃ足りません。特に段差がある場所を登り切る時の踏ん張り力を得るためには自重+負荷のワークアウトが必要になります。
段差を登り切る時のことを想像して見ましょう。あなたは片方の足を段差の上にのせます。その瞬間、もう一方の足で地面を蹴り出します。慣性の法則のようにそのまま自重+ザックの荷物の重さが段差の上まで行ってくれればいいのですが、段差が大きくなるほど難しくなりますね。必然的に段差の上にのせた足でギューっと踏ん張って筋力を発揮することになりますよね。
あなたの体重が日本人の平均体重である65kgで、荷物の重量が20kgだったとすると総重量は85kgになります。片方の足で地面を蹴り出して勢いに乗ったとしても、その勢いが途中で失速した瞬間、段差の上にのせた側の足には85kgの力がかかります。
65kgの体重で自重スクワットをやっても不足するというのはそんな理由からです。自重でスクワットをやっても半分の32.5kgの負荷より低い負荷しかかかりません。なぜならば上半身の重量しか負荷にならないからです。
ここで必要になるのはMAXで片方の足で85kgの力を一瞬でも発揮できる筋力です。そこで必要になるのが自重以上に負荷をかけたスクワットです。具体的にはバーベルスクワット、自重での片足スクワットなどが挙げられます。
この片足で一瞬でもいいからMAX85kg筋力を発揮できる目安。
体重65kgだとすると80kgのバーベルを担いで、パラレルスクワット(太ももが床と平行になる角度)で連続20回、同様にピストル(片足スクワット)ならパラレルスクワットだと仮定すれば連続35回できればその筋力が手に入ると言えます。
その理由。興味のある方だけ読んで見てください。理論値となりますが下記に記しておきます。
片足にかかる負荷を計算してみましょう。
※実際に上げる重量の算出は足の重さ(両足で37%)を差し引きます。
http://www.nutri.co.jp/dic/ch1-6/keyword2.php
参考:総体重に対する身体各部位%体重(参考文献1-6-6)
体重65kg *63%(上半身の重さ) = 41kg
80kgのバーベルを背負うと両足にかかる総重量は121kg
80kgのバーベルを背負って20回パラレルスクワットができると1回できる最大重量は128kg
計算:80/33.3(係数)* 20回 = 128kg
つまり、体重65kgで80kgのバーベルを背負ってパラレルスクワットを20回できると、あなたは128kgのバーベルを背負って1回挙げることができる。この場合、片方の足には(128kgのバーベル+上半身の重さ41kg)の半分の重量84.5≒85kgがかかる。
したがって、あなたは片方の足で85kgの重量を1回押し上げるだけの筋力を備えていると言える。片足のスクワットでも同様に考え方で計算できる。
あなたはザックの荷物を背負ってテント場へ向かうまでに背筋(脊柱起立筋)の筋力を発揮し続けている
ザックに荷物を入れて歩くに上体がブレないよう体幹部の筋肉が絶えず働いてくれています。体幹部と言えば胸、お腹、背中がありますが一番コアになる筋肉が背中の中でも背骨付近にある脊柱起立筋です。
ザックを背負うための脊柱起立筋を鍛える目的であれば最大値を追うことよりも、ある程度の筋力を長時間発揮できる能力が必要になります。
そのためのワークアウトとして、うつ伏せの姿勢で上体起こし(いわゆる背筋運動)をやるのもいいのですが、手軽にできる運動はブリッジですね。この運動をやるとダイレクトに脊柱起立筋を使います。週1回でいいので脊柱起立筋を鍛えておくと荷物を背負った時のブレを軽減することにつながります。
ブリッジ以外では自重+20kgのウェイトでデッドリフト(ハーフでOK)を連続10〜20回、またはケトルベルでスイングかスナッチをやることで脊柱起立筋を鍛えることもできます。
さぁ、撮影ポイントに着いたぞ!いざ撮影するとなった時、あなたは前腕の腕橈骨筋を使うことになる

一眼レフ機や大口径のレンズをつけたミラーレス機の撮影で肝となるのは前腕の腕橈骨筋です。力コブ(上腕二頭筋)よりも大事な大事な部位です。ここを厳かにしている人は少なくありません。盲点でもあります。
フライパンを握っている調理人は前腕が発達していますね。あなたはレンズを付けたカメラを握ります。どのくらいの重さになりますか?
例えばマイクロフォーサーズ規格のLUMIXのG9に便利ズームのパナライカの12-60mmのレンズをつけると980gです。約1kgですね。フルサイズ機のD750 + 24-120mmのレンズの組み合わせだと約1.5kgになります。
更に三脚にカメラをセットしたまま歩くならManfrotto 軽量級のbefree カーボンで見積もってもG9とレンズと組み合わせで総重量が約2.2kgになります。たかが2kgでも長時間持って歩いていると腕が疲れてきます。
カメラワークに耐えうる腕橈骨筋を強化するワークアウト
腕橈骨筋とは写真の黄色部分の筋肉です。この部位は手のひらを縦に向けながら腕を曲げた時に使います。カメラもこのスタイルの握り方になります。

この時、力こぶ(上腕二頭筋)は副次的にしか使いません。力こぶは手の平を上向きにしないとダイレクトに使わないのです。よって、ダンベルで一生懸命カールをして力こぶ(上腕二頭筋)ばかり鍛えてももさほど大きな効果は望めません。
さて、写真では20gのケトルベルにタオルを巻いてハンマーカールをやっていますが、ここまで重い負荷でやる必要はありません。カメラを保持し続ける筋力を養うという意味では、カメラの重量を想定したうえで腕橈骨筋を鍛えるといいです。
そこで登場するのがチューブを使ったワークアウトです。チューブの利点は関節に負担がかからない、足にウェイトを落としてしまうリスクがない、場所を取らない、持ち運びができる、思い立ったらすぐにトレーニングできる点です。また、負荷の調整も容易です。女性や筋力がまだ不十分な方にオススメですね。
私自身、2kg程度の重さを長時間保持し続ける筋持久力を鍛える時は重いウェイトよりもチューブを好んで使います。セラバンド(THERABAND) の一番強い強度+4のチューブを二重にしてハンマーカールをやるときがあります。回数はできなくなるまでです。何セットもやる必要はありません。1−2セット集中してやりましょう。
もう一つのとっておきのワークアウトはパラレルハンドでの懸垂です。こちらは純粋に筋力の最大値を向上させることが目的ですね。腕橈骨筋を使うと同時に広背筋も鍛えることができます。広背筋は体を引きつける筋肉でもあります。もし、ハシゴや鎖場もある場所を行くなら引きつける力はあった方が安心感は担保できますね。私の場合ですが。
パラレルハンドの懸垂はなかなかやる場所がないのですが、チンニングスタンドに2つのタオルを巻いてやるとパラレルハンドでやることができます。握力も鍛えることができます。私はバーベルのバーにタオルを巻いてやっのですがンドグリップやるよりも本当に握る力を使っているように感じます。
テント泊でカメラ機材を持って写真を楽しく撮るためには鍛えましょう。
それでは。