旅と登山ってとても似ているなぁと感じます。
私はライフワークの一つとして登山をやっていますが、山の稜線歩きを通じて旅気分を味わいたいだけなのかもしれません。
私自身、百名山にも興味ありませんし、どこのルートを歩いたからスゴイだとか、偉いだかという感情は湧いてきません。一番追い求めているのは歩くプロセスを楽しめるかどうか?です。
スポンサーリンク
もくじ
旅と旅行の違い
旅行と旅の違いは何か?と訊かれたら、即効性のある非日常感を味わうのが「旅行」、遅効性が効いてきて何年経っても自分の心に残る印象的な時間を「旅」と答えます。
旅行は気軽さを兼ね備えています。「ちょっと遠出でもしてみるか」みたいな軽いノリでいつもより物理的に遠くへ行って美味しいものを食べたり温泉に入ったりする感じですね。
気軽に遠出をする感覚って一体どれくらいの所要時間をかけて行けば当てはまるのでしょうか。
私の場合、物理的に移動をするという定義なら所用時間が4時間程度で、ちょっくら遠出という感覚ですね。車で移動するなら一般道を使ったとして170〜180km離れた場所がそれに当てはまります。
特に用意周到な準備をする必要もなく、カメラと現金、着替えと歩ける靴さえ持って行けばそれだけで気軽な旅行を楽しめます。
しかし「旅」ともなると話が変わってきます。旅に出るには用意周到な準備が必要です。 旅は1日や2日では終わりません。数ヶ月から年単位でじっくりと時間をかけて物理的に移動することを指しています。旅行のような気軽さはありません。色々と準備をやらなければなりません。

仮に準備が万端でなくても旅には出れるでしょう。しかし準備不足が原因で自分の目的を果たせなくなることもあります。 例えば為替が急激に変動してしまったために資金が底をつき、行きたかった場所へ行けなくなるかもしれません。
準備段階で為替変動の影響を受けて資金が足りなくなってしまうというシナリオを事前に描き、実際に必要な資金より20%増しで軍資金を用意しておくなどの対策を取っておけばそんな事態に陥ることを回避できるかもしれません。
このように壮大なシナリオの基、物理的に時間をかけて広範囲に渡って移動するスタンスが私が定義する「旅」です。
登山と旅の共通点1:事前の準備に対するスタンス
登十分な準備をしておくというスタンスは登山でも一緒です。「旅」とても似ているのです。登山も事前に準備をしておかなければ、行けたはずなのに途中で引き返す羽目になったりします。

体調管理が甘くて登山中にお腹が痛くなった、行動食のカロリーが足りなかった、想定よりも中継地を通過するまでの所用時間がかかってるなど、事例を挙げればいくらでも出てきます。
事前の準備さえしっかりしていれば回避できることも少なくありません。
登山という行為は一瞬で物事が完結するような種類のものではありません。大前提となる事前準備をしっかりとやったという前提がなければ、登山の輝かしいストーリーは描かれません。これはもはや旅と言えるでしょう。
登山と旅の共通点2:まとまった時間の確保
旅に出るにはまとまった時間が必要です。最低でも1ヶ月以上の時間は欲しいとこところです。残念ながら日本の会社組織に属しながら旅に出ることは、ほとんどの人が実現できないという現実があります。一度は所属組織から離れる覚悟があるかどうかということを問われます。
登山も旅同様にまとまった時間が必要です。稜線を歩きながら景色を眺めるトレッキングスタイルで縦走をするなら尚更です。しかし、旅ほどの時間は必要ありません。3〜4日間のまとまった時間が取れればOKです。

密度の濃い時間は脳みそに刻み込まれます。その理由は自分の体を使って歩くことによって、多様なシーンが目に飛び込んでくる頻度が多いからです。人間は変化を感じた時や何か感情に強く訴えかけるものがあると、それを時間として認識します。それは山にかかる虹かもしれませんし、真っ赤な夕焼けかもしれません。

長い旅の途上 (文春文庫) posted with カエレバ 星野 道夫 文藝春秋 2002-05-01 Amazon楽天市場
登山と旅の共通点3:何が起こるのかを察知できる能力
旅で得た経験は想像力を働かせるスキルとなり、登山でも転用できるようになります。
想像力はある程度、様々なシチュエーションでの出来事に遭遇するこで養われます。読書だけではなく実践が必要です。普段から行動範囲を広くし実践的な体験を多く積むことで、あるシーンが目前に迫ったとき、何が起こるのか察知できるようになります。これは旅でも登山でも共通しています。やはり場数が大事なのですよ。
広い範囲を移動するような旅をしていると実に多様な気候があることを実感します。体調を維持するためには自分の体を適合させなければなりません。
その中でも役立った経験があります。強風地帯で有名なパタゴニア南部を歩いている時のことでした。気温は10数度あったと思いますが、どんよりとした空の下で強風に身をさらしていると体が冷えてしまうんですよね。雨や雪よりも風のほうが怖いということを思い知らされました。

この経験は登山にも応用できているというわけです。稜線の上に出れば風が吹つける。一旦、強風の中に身を置くと衣類を取り出すのも困難。だから稜線直下で暴風対策としてレインウェアを事前に着用する、という想像力が働くので前準備の段階で必ず用意をします。
登山と旅の共通点4:自分の感情が動いた出来事は「時間」として認識される
これまでに旅や登山を通じて自分の中に残っている記憶を思い起こすと、自分の感情が動いたシーンだけが脳裏に残っているということに気づきました。つまりそれは「時間」です。感情が介在したシーンだけが自分の中に時間として認識されているということです。
どんなシーンかというと人とのやり取り、つまりそこには感情が介在しています。トラブルで怒りを覚えた、助けてもらって嬉しかった、言葉が通じないがために歯がゆい思いをしたなどです。

同様に自分と自然界が対面した世界にも感情が介在しています。それは広大な土地一面に咲き乱れる黄色いタンポポだったり、荒れ狂った海のうねりだったり、これまでの生きてきた記憶の中ではありえないくらいの高度感がある地形だったりです。
それは登山でも似ているんですよね。土砂降りだった雨から突然、晴れだしてきて足元に雲海が広がったりするようなシーンって下界じゃないですからね。
登山と旅の共通点5:総合的な能力が問われる
旅も登山も実践すると総合的な能力が身につきます。逆に言えば総合力がなければできません。
計画力、調べる能力、読図力、概算力、計算力、体力、タイムマネージメント力、先見力、想像力、察知能力、思考力、独自視点、判断力、決断力、俯瞰力という具合に多様な能力が求められます。

実際に旅で出会った人や登山をやる人は、セルフコントロール能力が高いように思います。つまりは、目的意識を持って自分なりの哲学を持って行動しているということです。
旅も登山も知的な遊びです。つくづく旅と登山はとても相通ずるものがあるなぁと感じております。
それでは。
こんな記事もあります。
人は都合のいいように記憶を書き換えてしまう動物。だからこそ旅では写真を残そう