大キレット、越えてみたいですか?
いや、いや、大キレットなんて楽勝でしょ、なんて考えている人が いる一方で、
一度は越えてみたいと考えている人もいます。
しかし、あえて言います。
人に対する自己顕示欲を示すことが目的なら足を踏み入れない方が幸せです。
自分の中で絶対的にやってみたいという気持ちがある人以外、絶対に足を踏み入れてはならない場所だと私は思います。
山は楽しむ場所です。
もくじ
大キレットには「気掛かり」を抱えたまま絶対に足を踏み入れてはならない
大キレットの核心部では「ちょっとミスちゃった、アハハー」。
なんてのが全く通用しない場所です。
ちょっとしたミスは奈落の底へ吸い込まれてしまうことを意味する場所です。
つまり死です。
日常生活や仕事でのケアレスミスはほとんどの場合、命には直結しません。
「あ、メールの宛先間違えちゃった」。
「味噌汁に味噌を入れ過ぎちゃった」。
といった感じで苦笑いで済んでしまうことが大半です。
これまで生きてきた中で、全神経を目の前のことに集中したことはありますか?
喉がカラカラになるほど全神経を、自分の手、足の動きに集中したことはありますか?
未来でもなく過去でもなく「この瞬間」を生きたことがありますか?
「この瞬間」を生きるためには、気掛りを抱えることは毒でしかありません。
あのことやこのことを、あーでもない、こーでもない、と頭の中で堂々巡りをしている状況です。
これって、ケアレスミスを誘発するパターンですよ?
友達のこと、仕事のこと、支払いのこと、家の掃除のこと、冷蔵庫の中のことなどなど懸念を全てクリーンな状態にしないと気掛かりを背負うことになります。
言い換えれば、私生活そのものをクリーンにできる人以外、大キレットには足を踏み入れてはなりません。
大キレットに入るのは謙虚な心が必要です。
大キレットを越えるために体力は必要なのか?
大キレットのスタート地点は南岳または北穂高岳です。
上高地から入った場合、どちらへ行こうともコースタイムは9時間を越えます。
当然、スタート地点に自分の身を持っていけるだけの基礎体力は必要です。
基礎体力は大キレットを越えるための大前提条件となります。
では、どのくらいの体力が必要なのでしょうか?
普段の山行で20kgの荷物を背負って8時間行動できる体力があれば、十分なバッファがあると言えます。
心の余裕は大事です。
十分な体力を兼ね備えていると行動に余裕が生まれます。
核心部の中に入り緊張が強いられる場面があっても体力いうバッファがあるだけで「大丈夫。越えられる。俺は体力がある。だから大丈夫だ。落ち着いて行動しろ。そうすればいつかはここを越えられる」という気持ちになれます。
体力は精神や技術力をカバーします。
大キレットを越えるには筋力はどのくらい兼ね備えていたらいいのだろうか?
大キレットは年配の方や腕力が男性よりもない女性でも走破しています。
でも、筋力があることに越したことはありません。
特に技術に自信がなければ尚更です。
大キレットのコルから北穂高岳までは標高差300mの岩場を登って行きます。
普段、岩場に馴染みのない人が足を踏み入れると「え!マジ?ここを登るの?」ってなります。
まさしく体で這いつくばって岩場をよじ登って行きます。
後ろを見ると恐怖心で体が動かなくなるくらい高度感があります。
でも筋力に余裕があれば
「大丈夫。ここを掴んでいれば絶対に転がることはない。このくらいの負荷ならいつもやっているワークアウトより軽いじゃないか。だから筋力には余裕がある。落ち着け。大丈夫だ。」
という気持ちになれるんですよ。
実際に片方の手で岩を掴んで、ぐい!っと体を引きせるシーンが何度も何度も出てきます。
もしかしたら、テクニックが存在していて、そんなやり方をしなくてもいいのかもしれませんが、技術力がさほどない人にとっては筋力でカバーする他ありません。
技術力がある人は別。
山にまつわる本の中には、筋力トレーニングの内容が、腕立て、腹筋、背筋、スクワットくらいでとても実用性のある内容とは思えないものが紹介されていたりします。
大キレットで必要なのは懸垂力です。
懸垂をやりこみましょう。
最低でも自重で20回できるだけの懸垂力があると、腕で引き付ける自分の体重が軽く感じるようになります。
でも、結局必要なのは謙虚な態度
体力・筋力があれば、ちょっとしたテクニックはカバーできます。
でも、最後は謙虚な態度なんですよ。
大キレットは横暴な態度で臨めるような場所ではありません。
謙虚な態度で核心部を一つ一つ丁寧に進んで行くんです。
あ!ミスった!じゃ済まないんですよ。
絶対にミスっちゃいけない。
だから謙虚な態度で臨まなければダメなんです。
登山から帰ってきたら靴の泥を落としきちんと洗う。
使い終わったカメラのレンズを掃除し埃があったらブロアーで飛ばす。
SDカードにはデータを溜め込まず、きちんとバックアップをしカテゴリ分けをする。
こういった当たり前のことやるのが謙虚な態度です。
大キレットに挑戦する前に先ずは目の前の事柄を雑に扱わず丁寧にやってみてはいかがでしょうか。
それでは。