中辺路と伊勢路を歩いてみて感じたこと、それは登山とは違うアプローチでレンズの選択をする必要があるということです。
登山では換算24mmから120mm相当(或いは100mm)の標準ズームレンズがあると便利。
これは多くの人が実感していることでしょう。
その理由として登山では物理的に足で動いて画角調整ができない点が挙げられます。
例えば、稜線なんかでは足で動いてうっかり滑落しちゃったなんてことも考えられるわけで。
なんなら自由に焦点距離を変えられるズームレンズの方が便利だよね、ってなります。
ですから登山の行動最中に単焦点レンズを好んで使う人は少ないです。
星を撮影する時に単焦点レンズを使うくらいでしょうかね。
もちろん、熊野古道でも標準ズームレンズがあれば大抵の撮影はカバーできます。
ただ、登山とは事情が異なるんです。
ちょっと考えてみましょう。
もくじ
熊野古道は照葉樹林の森に覆われている
これまでにこのブログで紹介した熊野古道(中辺路、伊勢路)は温暖かつ年間降水量3000〜4000mmの多雨地帯である紀伊半島の南部に位置しています。
そのため低地の植生はほぼ照葉樹林です。
ちょっと「梅の月向農園」様の「なんでも梅学」で紹介されている紀伊半島の説明図を引用させて頂きましょう。
紀伊水道(きいすいどう)に流れ込む 黒潮(くろしお)の影響を受け、
引用:みなべの気候と海流
みなべは、一年を通じて気温の変化が少なく、温暖な気候に恵まれている。
常緑広葉樹(照葉樹林)が生い茂る熊野古道は、稜線の上にでる山とは事情が異なり森歩きが基本となります。
もう一つの特徴があります。
それは、森の中に古代のオブジェを感じる場所が点在しているということです。
もし、あなたが熊野古道トレッキングに行くのなら、歩きながら古代の雰囲気を楽しむ情景が思い浮かぶのではないでしょうか。
その時、あなたはどんな風に写真を撮るでしょうか?
ガッツリとレンズ数本を持ち込み、三脚を持って定点でフレーミングを撮りながら撮影するという感じにはなりませんよね。
ここは雰囲気を醸し出せる明るい単焦点レンズを使いたくなるのではないでしょう。
実際に私はズームレンズを持って行きましたが、今思えば「単焦点レンズが揃っていたら…」と感じております。
熊野古道トレッキングで使用した焦点距離の事例
大量の作例は伊勢路を歩いた話の記事をご覧いただくとして、特に16mm、28mm、85mm、100mmで撮影したものをピックアップしましょう。
ズームレンズの16mm(24mm相当)で撮影したものです。
森の中は暗いので絞り開放から少し絞ったF値に設定しています。
これでF4ですからね。
ボディの手ぶれ補正が効くとはいえ、ズームレンズ(DA16-85mm)だとなかなか厳しい場面もありました。
三脚があれば別ですがトレッキングですから手持ち撮影です。
明るい単焦点レンズがあると楽しいこと間違いありませんね。
28mm(42mm相当)の単焦点レンズで撮影したものです。
F2.8とこの画角にしてはあまり明るくもないマニュアルレンズですが、特定のオブジェを狙うと立体感を表現できます。
風景ではあまり活躍する場面もないのですが。
それにしても緑が濃いですよね。
これは石碑の左の石にピントを合わせてしまった奴ですが、古道がボケていくのが分かりますね。
準広角から標準画角の単焦点レンズがあると使い勝手がいいです。
ズームレンズの望遠端、85mm(127mm相当)で撮影したものです。
背景をボカすにはF値が暗いので意外と使っている場面は少なく、遠景を切り取る目的で使った感じです。
100mm(153mm相当)のマクロレンズで撮影したものです。
ボケを作るにはやはり単焦点レンズです。
熊野古道にはボカしたい被写体が多いんですね。
ただ、換算で150mmともなると焦点距離が長いです。
遠景を切り取ることを目的としなければ要らないかも。
意外だったのが、50mm(換算75mm)付近の焦点距離で撮影している写真が少なかったという点です。
おそらく標準画角に近い28mm(換算42mm)のレンズを使っている際、足で動くことによって中望遠の画角をカバーしていたのだろうと思います。
それも無意識に。
山の稜線と異なる点は、少し足で動いただけで構図や雰囲気も変わるということですね。
それから、超広角レンズ(換算15-30mm)も持って行きはしましたが使う機会などありませんでした。
ということで、熊野古道のトレイルを歩くなら16mm(換算24mm)と35mm(換算53mm)辺りの単焦点レンズがあれば95%以上のシーンで問題なく撮影を楽しめるでしょう。
以上のことから、このレンズ2本があればいい感じですね。(今はFUJIFILMを使っています。)
レンズを交換しながら歩くのか、同時に撮影しながら歩くのかの選択肢
雰囲気や画質を取るなら単焦点レンズの運用になります。
その代わりレンズ交換が伴ってきます。
それが面倒でカメラ2台で運用するという考え方もありますよね。
私も伊勢路を歩いた時は、カメラ2台を持ち歩いていました。
1台には便利なズームレンズ16-85mmを。
もう一台には100mmの単焦点(マクロ)レンズをつけて状況に応じて標準画角の28mm(42mm相当)のレンズに交換しながら歩くというスタイルでした。
とても便利です。
ただ、特定部位に対する不快感があることもまた事実です。
目的は歩きながら昔ながらの風情を感じることです。
速写をすることではありません。
少しでも快適に歩けたほうがいいじゃないですか。
熊野古道はじっくりと時間をかけて歩くことができます。
カメラ2台で運用する必要はなくカメラ1台で状況に応じてレンズを交換するスタイルが快適だと感じますね。
実際に熊野古道のトレッキングをやってみて、カメラ1台の運用がいいと実感しました。
それでは。