月間星ナビ(2016年11月号)に「世界の星絶景」を見に行くという特集が組まれています。この雑誌を見るたびに、星像写真はCanon機とNikon機の独擅場だなって思います。
もくじ
星像写真はフルサイズの低画素機+明るい広角単焦点のオンパレード
月刊ナビで紹介されていた撮影地は北半球、赤道、南半球に分かれています。
北半球は
・アメリカ西部の荒涼地帯(デスバレーやモニュメントバレー)
・ミャンマーの古代都市・ピュー
・クアロアチアのアドリア海
・ギリシャのメテオラ(天空の修道院がある)
赤道地帯は
・ハワイ島のマウナケア(標高4200m)
・インドネシアのスラウェシ島
・パプアニューギニア
南半球は
・オーストラリア
・チリのラス・カンパナス天文台(標高約2400m)
→公式ホームページ Las Campanas Observatory
となっています。
これらの中で星像写真として撮影された機材は
カメラ
・EOS-1DX(1810万画素)
・EOS-1Ds Mk2 (1720万画素)
・EOS-5D Mk3 (2230万画素)
・EOS 6D (2020万画素)
でした。
共通点は5つ。
・ ISO感度はいずれも2000以上で撮影
・明るい単焦点のオンパレード
・絞りは1段から2段絞っている
・カメラはフルサイズの低画素機
・CANONの独壇場
マジか! CANON、、、強過ぎです。
たまにNIKKOR 14-24mm f/2.8G ED、そしてTAMRON SP 15-30mm F/2.8 のレンズが出てくることはあっても、PENTAXや富士フィルムのカメラ機材が登場してくることはまずありません。
星空撮影の中でも星像の分野では、どうあがいてもフルサイズ機には勝てないのです。相手は明るい広角単焦点に、低画素機のフルサイズセンサーによる広い画素ピッチですよ?
最高ISO感度81万9200を売りにしているKPが画素ピッチの広いフルサイズ機に勝てるハズがありません。それだけ高感度に強ければ暗いレンズで露光時間が短くても星像写真が撮れるでしょう。でも、世界の巷情報にハッ!とする星像写真は上がってきません。
登山や旅で軽快に動くならAPS-C機かマイクロフォーサーズ機が現実的な選択
機材の重量と性能、そして荷物を持って行動できる範囲はいつでも悩ましい問題です。何を取るのか?何を重要視するのか?
星像写真を撮るなら「フルサイズ機+明るい単焦点は鉄壁」。疑いようのない事実です。星の流し撮りや比較明撮影以外では「APS-C機+キットのズームレンズ」では対抗できるハズがありません。
登山やトレッキング(または移動型の旅行)というカテゴリで撮影を考えた場合、システムの大きさや重量を見定める必要があります。登山と旅は似ていて持ち歩ける荷物に物理的限度があります。
となると、選択肢に上がってくるのがAPS-C機かマイクロフォーサーズ規格のカメラになります。理由はフルサイズ機よりも物理的にコンパクトにシステムを組めるからです。三脚も小型化できます。重要なのは軽量化ではありません。いかにコンパクトにするかです。
さてここで頭を使う必要が出てきます。自分がやりたいことを明確にし、それに合ったシステムを組むことです。特定の場所を定めた撮影旅行ではなく、移動型の旅行、縦走型の登山やトレッキングでやりたいことは何でしょうか?私の場合はこんな感じです。
・歩きながら広大な自然や歴史的な街並みを写真に収めたい
・星景撮影をしたい
・動画撮影をしてその時の臨場感を記録しておきたい
・インターバル撮影をしてタイムラプスを作りたい
この4つの条件を満たす機材は何だろうか?
風景写真だけ撮るなら基本的にどこのメーカーでもOK
全天候型で考えるなら、ボディ、防塵防滴レンズのラインアップに力を入れているオリンパス、富士フィルム、ペンタックスが選択肢に入ります。
風景撮影の場合は明るいレンズは必要なくシャープに撮れるレンズが好ましいです。そのうえで焦点距離の幅も広い方がいいです。もちろん風景撮影は広角側が広いほうが潰しが利くのでフルサイズ機換算で24mm相当の焦点距離が欲しいです。
となると・・・オリンパスの M.ZUIKO DIGITAL ED 12-100mm F4.0か、ペンタックスのDA16-85mm F3.5-5.6、富士FILMのXF16-55mmになります。
カバーできる焦点距離の利便性を考えると、換算24〜200mmまでカバーしているZUIKOレンズがダントツに有利です。一方、富士フィルムのXFレンズの望遠側は換算で84mmまでしかカバーしていませんがF2.8通しです。ペンタックスのDAレンズはF値が可変であるものの、重量的にはこの3つの中で一番軽量である480gです。
街並みも撮影するということを考慮すると、上記に標準画角の単焦点レンズ1本加えたらいいですね。
基本的に風景を撮影するなら明るいF値は不要なことが多いので、どこのメーカーを使っても構いません。この中でも重量とカバーしている焦点距離のバランスから選択するといいでしょう。
星景写真を撮影したい、には3種類ある
①星像として星景を撮影
②長時間露光で流し撮り、または比較明撮影
③風景が流れてもいいから星を追尾撮影
①なら景色が歪んでもOKという前提でオリンパスのM.ZUIKO DIGITAL ED 8mm F1.8 Fisheyeを選択しますね。または、富士フィルムのXF16mmF1.4 R WRです。どちらも防塵防滴のレンズです。星なんて天気のいい日にしか撮りませんが、結露のことを考慮すると防塵防滴は強い味方になります。
ちなみにXF16mmF1.4は開放(F1.4)で星を撮影すると星の形が崩れてしまう「サジタルコマフレア」という現象が発生します。ですので星景撮影における実質F値は2.0〜2.8になります。詳しくは実際に私が撮影して検証した記事に書いています。
②ならどこのメーカーのどのレンズでも構いませんね。キットのF3.5-5.6のズームレンズでも問題ありません。ピントさえ合えばOKですから。
③なら赤道儀を使うということになります。が、そんなお荷物は邪魔なだけです。となると、ペンタックスのカメラにアストロレーサーをつけるか、最初からアストロレーサーが搭載されているK-3IIがベストな選択肢になります。
一番ハードルが低いのが②ですね。でも表現の幅が狭いなぁ。それは悲しい。となると①がいい選択肢ではないだろうか。
「動画撮影をしたい」を満たすカメラは最低でもFull HDで60p以上の動画を撮れること
この時点でペンタックスは全機種が脱落です。Full HDだと最大で30pまでしか撮れません。選択肢に上がってくるのが、E-M5 MK2、E-M1 MK2、X-T1、X-T2、X-Pro2になります。
更にこの中でも4K動画に対応しているは、オリンパスの E-M1 MarkII 、または富士フィルムのX-T2になります。
富士フィルムはX-Pro2に対しても2017年12月に4K動画対応のファームウェアを無償提供すると明言しています。
「FUJIFILM X-Pro2」「FUJIFILM X-T2」「FUJIFILM X100F」「FUJIFILM X-T20」の 最新ファームウエアを無償提供
富士フィルムは動画に力を入れ始めていますので、選択するならX-T2、X-Pro2がいいかもしれませんね。
タイムラプス動画を作るならバッテリーの持ちが大事
どのカメラでもインターバル撮影は可能です。一番の問題はバッテリーの持ち。
光学式の一眼レフはバッテリーの持続力があります。つまり、ペンタックスのK-3系ですね。バッテリーグリップなしで700枚以上撮影できます。予備のバッテリー2個追加すれば1日に2000枚の撮影に対応できます。何本もインターバル撮影ができますね。最強。
ミラーレスの弱点はバッテリーの持ちが悪いことです。E-M5系もE-M1系、それからX-T1、X-T2、X-Pro2のどれも撮影可能枚数は300〜350枚程度です。2000枚の撮影に対応しようと思ったら予備バッテリーが5個必要になります。
小物が増えるほど管理が煩雑になります。それを解消するのがバッテリーグリップです。
・E-M5 MK2 にHLD-8併用で580枚
・E-M1にHLD-7を併用で680枚
・E-M1 MK2に HLD-9を併用で880枚
・X-T1にVG-XT1を併用で700枚
・X-T2にVPB-XT2を併用で1000枚
の撮影が可能です。
富士フィルムのいいところはどの機種を使っても同じバッテリー型番を使えることです。とてもユーザーフレンドリーです。ちなみにVPB-XT2はバッテリーを2個補填することができます。つまり本体と合わせて3個。インターバル撮影を何本もやるんだったら、X-T2 + VPB-XT2になりますね。
ここでK3系とX-T2の一騎打ち。星空のインターバル撮影をやるんだったらX-T2です。なぜならばXF16mm F1.4という明るいレンズがあるからです。ただしF2.8まで絞らないとサジタルコマフレが発生しますが。
私が長期トレッキング(+フィールドに出ることを前提とした旅)をするならカメラ2台、レンズ3つでシステムを組む
オリンパス | ペンタックス | 富士フィルム | |
風景撮影 (ズーム範囲) | ◉ | ◉ | ○ |
星空撮影(星像) | ◉ | △ | ◉ |
動画撮影 | ◉ | △ | ◉ |
インターバル撮影 | ○ | ◉ | ◉ |
フルサイズ機だと物理的に何台もカメラを持ち歩けないし、大三元のレンズはお荷物になってしまいます。そこで、光学式のAPS-C一眼レフ+ズームレンズ、ミラーレス機+単焦点2本という組み合わせでシステムを組んだらいいのではないだろうか?
もし、私が長期トレッキング(またはフィールドに出ることを前提とした旅)をするなら、カメラ2台、レンズ3つでシステムを組みます。
風景撮影、日中のインターバル撮影用に
・K-3系
・DA16-85mm F3.5-5.6
・予備バッテリー1個
星の点像撮影、夜のインターバル撮影用、動画撮影用に
・X-T2
・ XF16mm F1.4
・予備バッテリー2個
街中スナップ用に
・Rayqual マウントアダプタ(KマウントをXマウントへ変換)
・PENTAX M28mm F2.8
マウンドアダプタを使う目的はもうひとつあります。K-3が故障した時、DAレンズがX-T2で使えるからです。逆は無理ですけど。
上記のシステムで総重量は約2500gです。撮影可能枚数は2400枚です。ところで、ここではX-T2のバッテリーグリップは含めていません。一度のインターバル撮影で連続350枚以上を撮るシーンは限定的だからです。
一方で、CANONのフラグシップ機 EOS 1D X MK2 + 24-100mm(F4)の標準レンズ、またはNikonのフラグシップ機 D5 + 24-120mm(F4)の組み合わせだと約2200g。4Kの動画撮影もできます。特にD5は予備バッテリーなしで3780枚もの撮影が可能です。鉄壁仕様ですね。でも、シーンによってカメラを使い分けることができません。超広角レンズ、標準画角の単焦点レンズを加えると、総重量は軽く3000gオーバーです。
ということで、K-3系+X-T2という結論に至りました。
それでは。