国内の主要カメラメーカー(Nikon、Canon、パナソニック、オリンパス、富士フィルム、SONY)に内部結露の可能性による電子基板の腐食について質問をしました。
ターゲット機種はD500、7D MarkII、G9、E-M1 MarkII、X-T2、α9です。いずれのボディも防塵防滴・耐寒性能はー10℃を謳っており、ボディにはマグネシウム合金を使っています。
質問の結果、以下の答えが返ってきてきました。
もくじ
内部結露が発生し電子基板が腐食する可能性はある
簡単に要約すると、
防塵防滴を謳っているカメラでも、寒い場所から暖かい場所へ移動すれば、ボディ内部で結露が発生する可能性がある。その場合、電子基板などが腐食し、故障してしまう可能性がある。
ということです。
今回、私のK-3が誤動作を起こした原因は基板の内部腐食によるものでした。発端は内部結露です。防塵防滴機能には不具合ナシとの診断でした。
さて、各メーカーの回答を箇条書きにします。
- 防塵防滴の性能は外部からの水滴や塵に対して発揮される
- 密閉構造ではないため、
本体内部に湿気が無い状態を維持することはできない構造 - カメラが防塵、防滴機能を有している場合でも、
急激な温度変化があると、 内部の空気中に含まれる水分が結露する可能性がある - カメラ内部の温度が外部よりも高くなると、空気と共に湿気(
水分)が入り込みやすくなり、 レンズのガラス面で冷やされることで結露が生じる - 結露(曇り)
はレンズやファインダーに発生することが多くセンサーに曇りが発生する可能性は低い現象 - 温度差や湿度差のある環境では、
ボディ内部やレンズ内部に結露が発生する可能性がある
電子基板の腐食について言及をしてくれたメーカーは、オリンパスとパナソニックだけでしたね。他のメーカーはスルーした感じです。
内部結露に対する見解
防塵防滴は外部に対して有効。これはパンフレットや製品ページ積極的に宣伝している点です。ほとんどのユーザーはここに気を取られます。
急激な温度変化(気温の低い場所 → 気温の高い場所)があると、ボディ内部で結露が発生する可能性がある。これは宣伝では流れない情報です。これがユーザーにとってはネックです。特にこれからカメラを始めようという初心者にとっては。
防塵防滴のカメラで内部結露が発生する可能性があることは宣伝されることはない
ユーザーは防塵防滴という言葉を信じてカメラを購入します。さて、ここで問題があります。
パンフレットや製品の特徴ページには「外部からの滴や塵に対しては強いんだ」ということを積極的に宣伝をしていてますよね。そりゃ、ワクワクします。「おー、このカメラは頑丈なのか」ってね。でも内部の結露の可能性については宣伝として情報を流していまん。
メーカーに問い合わせない限り、防塵防滴のカメラでも内部結露が発生する可能性がある、ということを購入前のユーザー(特にこれからカメラを始めようという初心者)は知ることがありません。
そこで再度質問。なぜ、製品サイトやパンフレットに内部結露が起こり得る可能性があることを掲載しないのか?この質問を交わして別の回答ですり替えをするメーカー、認めるメーカー、両方ありました。使うなら後者のメーカーですよね。
万が一、不具合が発生したり故障が起こればメーカーの言い分はこうです。
「説明書の●●ページ目に記載してあります。」
メーカーも利益が絡んでいるから、なるべくなら負の情報は小さく扱っておきたいとうのが本音。嘘は言わないけど積極的に情報を流すことはありませんね。
とは言えメーカーも取扱説明書をWebからPDFファイルでダウンロードできるようにしてる
まぁ、正確に言うと掲載はしている(逃げ道は作ってある)んですけどね。
どこに?
取扱説明書をPDFファイルでWeb上で見れるようにしてあります。それを読めば内部結露についても書いてあるんですよ。
しかし、カメラを購入前にわざわざファイル容量の大きいPDFファイルの取扱説明書を閲覧をする人がどれだけいるんでしょう? 先ず見るのはパンフレットだったり製品の特徴ページだったりしますよね。ここに書くべきじゃない?
メーカーのPDFファイル(説明書)のリンクを貼ったので興味がある人は開いてみてください。
オリンパス:O-MD E-M1 MarkII
• 寒い戸外から暖かい室内に入るなど急激に 温度が変わったときは、カメラ内部で結露 が発生する場合があります。
取扱説明書 P187:https://cs2.olympus-imaging.jp/jp/support/dlc/archive/man_em1m2.pdf
富士フィルム:X-T2
本製品を寒いところから急に暖かいところに持ち込んだときなどに、本製 品内外部やレンズなどに水滴がつくこと(結露)があります。
取扱説明書 P315:http://fujifilm-dsc.com/ja/manual/x-t2_v30/x-t2_omw_ja_s_f.pdf
Canon:EOS 7D MarkII
カメラを寒いところから、急に暑いところに移すと、カメラの外部や内部に結露(水滴)が発生することがあります。
取扱説明書 P20 :http://gdlp01.c-wss.com/gds/4/0300016614/01/eos7d-mk2-im-ja.pdf
Nikon:D500 (内部結露の記載なし)
→ 追記
P336に以下の記載あり
● 急激な温度変化を与えない
極端に温度差のある場所に急にカメラを持ち込むと、カメラ内外に水滴が生じ、故 障の原因となります。カメラをバッグやビニール袋などに入れて、周囲の温度にな じませてからお使いください。
確かに意味としては内部結露に相当する記載がある。でも購入前に400ページ近くもあるPDFファイルって読むのか?ってのが疑問。この一言が一体、どれだけの人の目に止まるのだろう?キーワードで検索をかければ確かにヒットはしますが…
SONY:α9(記載なし)
http://www.sony.jp/ServiceArea/impdf/pdf/46926760M-JP.pdf
パナソニック:G9(内部結露の記載なし)
発売前なのか取扱説明書はまだWebに掲載していない模様。と思いGH5の取扱説明書を見るもやはり内部結露に関する記載はナシでした。電子基板が腐食する可能性については言及してくれたんだけどなぁ。
情報提供不足でクレームになったとしても負の情報は小さく取り扱った方が企業としては都合がいいのか?
ちなみにNikonもパナソニックも内部結露が発生する可能性は認めていますが説明書には記載がありません。これが購入前ユーザーとしてネックになる部分。事前に情報が流れてないんですからね。
理科で習っただろ?そんなの常識だ!云々ではなく、事前に情報をユーザーに伝えているかどうかが問題。ある意味ステルスマーケティングと捉えてもおかしくないわけです。
以上のことから、ペンタックスだけの問題ではないということが分かったわけです。
幾つかのメーカーは情報掲載については担当部署に申し伝えます、という形で返答をしてきてました。これを信じるかどうかは微妙。都合の悪い情報ですからね。また、使用環境が異なるために掲載することができないと言ってきたメーカーもありました。
これじゃ購入者は不利になります。万が一不具合が生じた際、情報提供不足という視点に立てばクレーム行き必至ですね。メーカーは負の情報を小さく取り扱ってでも(あまり言いたくない)少しのクレームを受けた方が利益を確保できるのかも。メーカーは、この小さな声をユーザーにフィードバックしてくれないのかなー。
と書いてきたけど、一応、各メーカー共に結露に対する予防策というものを提示してきております。また別記事で書きます。続きは「カメラメーカーから教わったボディを内部結露から守る方法」で。