当記事は、PENTAXからFUJIFILMへの一部システム移行を想定し、2017年の11月にフジフイルム スクエア(六本木にあった頃)でX-T2を借りてレンズの検証をしてきた時の話です。
PENTAXとFUJIFILMの同時運用を考慮しつつも、仮にFUJIFILMのシステムへ完全移行すれば便利ズームとして候補に上がるレッドバッジのXF16-55mmF2.8 R LM WRです。
もし、XF16-55mmで運用するとどうなるのか、というのを確認するのが主な目的。
作例を見ても、MTFを見ても、描写力に差異を感じることができなかったXF16-55mmとDA16-85mmの描写力を実際に撮影して比較してます。
もくじ
XF16-55mmはAPS-C機用として最高峰のスペックを誇る標準ズームレンズだと思っていた
比較したレンズです。
2017年11月の時点では、どちらも標準レンズとしてはフラグシップという位置付けです。
ペンタックスにはスターレンズであるDA★16-50mm F2.8通しの防塵防滴レンズがありますが、AFの速度や耐逆光性能で後発であるDA16-85mmに負けてしまいますので、後者がフラグシップかなと思っています。
FUJIFILMのXF16-55mmF2.8 はAPS-Cセンサー搭載機用の標準ズームレンズとしては最高峰だと思っていました。
理由は
- 描写力が高い
- F2.8通し
- 防塵防滴
だからです。
ただ、F2.8が必要な場面なら単焦点レンズでも賄えるわけです。
ですから、行動時間が多い日中の撮影という点にフォーカスするとXF16-55mmとDA16-85mmの描写能力の差ってどうなんだろう?って疑問がありました。
言うまでもなく、XF16-55mmはF2.8通しなのでレンズの重量が660gと決して軽くはありません。
対するDA16-85mmは490g。
F値が可変のため多少は軽量なんですよね。
この2つのレンズがもし、描写能力が同じだったら?
風景の作例をXF16-55mmとDA16-85mmの両方を比較するも差異なし
XF16-55mmF2.8 とDA16-85mmF3.5-5.6の広角側(16mm側)を比較する材料として500pxとGANFREFの作例を幾度もチェックしてきました。
どちらも2400万画素で撮影された被写体で見比べてはいるんですが…。
うーん、作例(500px)を見る限り、レタッチをされていたとしてもどちらもレンズの能力に大差があるように思えません(日中の撮影)。
ぶっちゃけ何が違うねん!って感じです。
レベルが同じくらいならばあえてXF16-55mmのために10万円も出さなくてもいいんじゃないのか。
となると、やはりダブルマウントで組むなら標準ズームはペンタックスに頑張ってもらいFUJIFILMで広角単焦点を組むのが妥当なところじゃないか?
いや、スペック的な観点からも確認してみよう。
じゃあ、MTF(Modulation Transfer Function)曲線でレンズ性能を比較してみる
MTF特性図とは?
MTFとは、Modulation Transfer Function の略で、コントラスト再現比によるレンズ性能評価方法です。
Canon ホームページ「EFレンズの基礎知識」 より
<中略>
MTF特性図上の10本/mmのカーブが1に近いほどコントラスト特性がよく、ヌケの良いレンズとなり、30本/mmのカーブが1に近いほど高解像力を備えたシャープなレンズとなります。シャープで抜けのよい高性能レンズであるためには、両者でバランスが取れていることが大切ですが、一般的に10本/mmのMTF特性が0.8以上あれば優秀なレンズ、0.6以上あれば満足できる画質が得られると言われています。
ということでMTF曲線のチャートを使ってみましょう。
私が一番気にしているのは広角側の描写力ですので、ワイド端に着目しボケの性能については度外視しますね。
MTF曲線を簡単に説明すると、
- 1mmの間に線を何本引いたのか
- その線をどれだけ描写できているのか
を表す指標になります。
数値が1.0であれば1mmの間に引かれている線を完璧に描写できている、という判断になります。
XF16-55mmF2.8 R LM WRのMTF曲線
- 15本/mm(コントラスト):0.90前後
- 45本/mm(解像度):0.65前後
FUJIILMが凄いなと思うことは、他社が10本/mm、30本/mmでMTF曲線を出してきている中で、更に細かい15本/mm、45本/mmで指標を出している点です。
HD PENTAX-DA 16-85mmF3.5-5.6ED DC WRのMTF曲線
- 10本/mm(コントラスト):0.83前後
- 30本/mm(解像度):0.58前後
MTF曲線から読み取れること。
- 10本/mmのカーブが1に近い:コントラスト特性 が良い= ヌケが良い = 光をよく通す=モヤっとしていない
- 30本/mmのカーブが1に近い:解像度が高い = シャープなレンズ
以上の見解から、XF16-55mmは15本/mm、DA16-85mmは10本/mmのMTF特性が0.8以上あるので優秀なレンズである言えます。
更にMTF曲線だけの数値で比較するとXF16-55mmの方が優れているのが一目瞭然です。
ただ、DA16-85mmとの作例を比較しても、どちらも描写能力に差があるように思えないんですよね。
ならば、実地検証しかありません。
ということでやったのが今回の検証でした。
実地検証では、F5.6における広角端の解像度はXF16-55mm、DA16-85mm共に同レベル
結論から言うと、どちらのレンズも解像度に関しては同レベルです。
レンズのスペックだけを見ると、XF16-55mmの方が優れているように見えますが、今回の検証でDA16-85mmも同レベルの解像度を叩き出すことを確信しました。
XF16-55mmは全メーカーにおけるAPS-C機の標準ズームレンズとしてフラグシップモデルに君臨すると思っています。
一方でDA16-85mmはペンタックスブランドの標準ズームレンズとしてフラグシップモデルの位置付けであると解釈しています。
絞り値はF3.5スタートと暗く可変であるものの、やはり耐逆行性に強いこと、極めてクリアな絵を吐き出すことが挙げられます。
私が撮影をするエリアは主に山での風景です。
撮影対象は稜線の地形、花や木、朝焼け、夕焼け、星空です。
次に多いのが旅先での撮影です。
私の性格上、旅先でも自ずと風景に特化したレンズを使うことになります。
どちらのレンズも私が使う用途としては、一番美味しい画角をカバーしています。
XF16-55mmとDA16-85mmそれぞれのレンズの能力を、私が使うシーンを想定し比較するとすれば、パンフォーカスでも使える絞り値F5.6です。
画角は風景の撮影がメインになると広角側(16mm側)を使うことが多いです。
というわけで16mm側で撮影した周辺画像の比較データ(300%に拡大)を載せます。
解像度の比較をしやすいように、どちらもRAWファイルをLightroomでシャドウ値を持ち上げています。
それからXF16-55mmで撮影したほうは露出を少し上げています。
それ以外は一切触っていません。
左:X-T2+XF16-55mm
右:K-3+DA16-85mm
どーですか?
300%まで拡大した周辺画像を見れば一目瞭然。
どちらも同レベルです。
線上の被写体ではXF16-55mmよりもDA16-85mmの解像度が高くなることが判明した
XF16-55mmが上なんだろうと踏んでいたのですが、線状の被写体ではDA16-85mmのほうが鮮明な絵を吐き出すことが判明しました。
手前側のビルの窓上下にある線上のブロックを見ると、右側の画像(DA16-85mm)が高い解像度で写し出されています。
どちらも16mm側、F8で撮影しています。
左:X-T2+XF16-55mm
右:K-3+DA16-85mm
検証当時、FUJIFIM機には手ぶれ補正があるX-H1のようなボディがありませんでした。
XF-16-55mmのレンズ自体にも手ぶれ補正がありません。
とはいえ、シャッター速度は1/1800で切っていますので手ブレが起きるとは思えません。
ちなみにXF16-55mmのデータですが、ここに掲載した写真以外にも数枚撮っていますがどれも似たようなクオリティでした。
これでも何枚か撮影したベストショットを選び比較をしたつもりです。
これがよく言われているポップコーン現象によるものなのか、それともレンズに起因することなのかは定かではありません。
一つ言えることは線状の描写に関しては、PENTAX K-3 +DA16-85mmの方が鮮明な絵を吐き出したという事実があったということです。
ただ、これは等倍よりも更に拡大しています。
実用上での差異は判別できません。
結論:K-3+DA16-85mmを存続させる
私はPENTAX機のボディに不信感を抱いています。
それは過去の記事でも触れた通りです。
ここがいけないよ!PENTAXのカメラに対する品質的な不満点
そんなわけで、Xシリーズのレンズを検証するという行動にまで至りこの記事を書いています。
ネットの評判からの影響もありXF16-55mmに少しだけ期待をかけていました。DA16-85mmは負けるんだろうと。
しかし、実際は違いました。
この検証結果を以って、より美味しい画角をカバーしているDA16-85mmを手放す理由はなくなりました。
このレンズの描写力も優れているんだなということを改めて認識しました。
明るいF値を持つXF16-55mmにアドバンテージがあるとすれば、F2.8で撮影するシーンで対応できるという点です。
具体的には星空撮影、植物などを撮影する時に背景ボカしたり前ボケを作って撮影したい、ポートレートも欲張りたいといった時に、この1本のレンズで対応できることです。
便利で万能で描写力の高いレンズ1本で済ませたい場合はXF16-55mmはAPS-C機の標準ズームレンズとして王者に君臨すること間違いなしです。
ただ、私の使用用途であれば、Xマウント機を導入したとしても、あえてXF16-55mmに手を出す必要はないという結論に至りました。
私の場合ですが、星空撮影ならもっと広い画角で撮影したいので別でレンズを準備をした方が幸せになれる気がしますし、植物や花の撮影ならDFA100mmでOKだし、ポートレートなら別に単焦点レンズか明るい望遠系ズームレンズを準備するかなって感じです。
これで一つの命題が解決しました。
ボディに不信はあるもののK-3+ DA16-85mmは存続させます。
よって、今抱えているもう一つの不満点「ペンタックスには超広角レンズのラインアップに穴が開いている」を解決する手立てとして、Xマウントのシステムに広角レンズを求めることになりそうです。
広角レンズの検証はまた別記事で。
それでは。