先日、当ブログ「Time Strom」を見た方からワークアウトに関するご質問を頂きました。
要約すると私が掲載しているワークアウトのメニューの他に加えて、格闘技で必要なワークアウトは何でしょうか?というものでした。
私がやっているワークアウトは、ロシアの特殊部隊が採用しているケトルベルだったりクロスフィット系の動作を併用しております。それらのワークアウトを通じて持久力と筋力の両方を獲得しており、格闘技との共通点もあるという視点から多少の知見はシェアできるのではないかと思い質問にお答えすることにしました。
ただし私は格闘技をする習慣がないという前提をお伝えしたうえでのお話になります。格闘っぽい経験と言えば後述する柔道ですね。
ご質問者様の現在の状況
日常的なワークアウトとして、腕立て、スクワット、シットアップ、ジャンプなどをされているようで回数は200、300回こなしているそうです。
ウェイト経験はなし。
種別は総合格闘技で、キック、投げ、締めなどの動作が伴うとのこと。具体的な体格はお伺いしてませんが小柄とのこと。
先ずは質問に対する回答いたします。(その理由は記事で後述します)
ウェイトはやらない(あるいはできる環境にない)ということを前提でお答えします。
腕立て、スクワット、ジャンプはそのまま継続して下さい。トータルでの回数をこなしていますので筋持久力は養うという観点ではそのまま継続していいと思います。
格闘界でも自重で総回数をこなすワークアウトを取り入れている実例があります。横綱力士の千代の富士は腕立て伏せを1日500回、ヘビー級王者マイクタイソンはディップスを500回以上をこなすワークアウトを採用していました。
ただ、一般の体格の人たちとは相違点があります。彼らは体重がありました。千代の富士は120kg台、タイソンも100kgです。体自体がウェイトになっており一般人よりも高強度のワークアウトをこなしていたと言えます。
一般の体重(50〜70kgくらい)の人が出力向上を目指すなら一歩踏み込んだ手法が必要です。
腕立てなら一方の手を真横に広げて片手で腕立てをやる。
片足スクワットやブルガリアンスクワットをやる。
シットアップはレッグレイズへ。
ジャンプはいいですね。私も採用したいです!
上記に加えて5つのワークアウトを追加したらいいでしょう。
それは懸垂、逆立ち腕立て、ブリッジ、レッグレイズ、腿上げです。懸垂が自宅でできる環境になければ公園でOKです。
特に上半身に関して言えばポイントは垂直系の動作にあります。
以上のことを踏まえ、私がこれまでにやってきたワークアウトの知見を格闘技に活かすとすれば、こんなのをやるよなー、というお話になります。どの格闘技というよりは原理原則的な側面からの見解になります。
もくじ
柔道の体験から感じている脊柱起立筋の重要性
まず、私自身のことについて言えば日常的に格闘技をする習慣がありません。せいぜい学校でやった(やらされたが正しい)柔道くらいでしょうか。(格闘技というか武道かな?)
柔道について言えば体重58kgだった頃、寝技をかけてきた90kgの相手を返すことができました。これには先生もビックリしておりましたね。そりゃ体重差が30kgありましたからね。
今思えば90kgの相手を切り返せたのは脊柱起立筋が強かったせいかな?と思います。どうやって返したのかは覚えてないのですが。おそらくブリッジ系の動作をして捻り動作でも入れたのだと思います。(もしかしたらテクニックの一種なのかもしれないけど)
成人男性の背筋力は130〜140kgと言われております。当時わずか58kgの体重で背筋力が180kgありましたからそれなりの筋力は備わっていたんですね。
何でそんなに背筋力があったのかと言うと、それは日常的にローイング動作を伴う競技、漕艇をやっていたからです。単に腕力や広背筋だけでなく背筋力の数値に直結する脊柱起立筋も使うわけです。
マシンで言うとエルゴメーターと呼ばれるやつでして、こんなやつを漕ぐわけです。動作の最終段階で脊柱起立筋も使うんですよね。
肝となるのは脊柱起立筋の強さ。ブリッジで鍛えよう
脊柱起立筋は背骨付近についている筋肉です。この部位は体の中で最も強く日常生活のあらゆる動作を支えています。
脊柱起立筋は背筋力を測定する際に使う筋肉でもあります。こんなマシーンですね。
脊柱起立筋が強いと以下の利点があります。
・動作をした際、姿勢が安定する
・ブリッジ動作などで相手を体重差のある相手を切り返しやすい
・下半身の力を上半身に伝えやすい
例えば打撃系の格闘技家を見ていると、彼らは下半身の力を体の末端、つまり拳にまで伝えています。下半身の力を上半身に伝達する時に脊柱起立筋が弱いと体幹部が下半身の力に負けてしまいます。
組み系の格闘技でもやはり脊柱起立筋の強さがモノを言いますね。見ている感じですが。例えばレスリング選手は相手を切り返す場面がありますが、ブリッジ姿勢で脊柱起立筋の力を使う場面が伴います。
では、脊柱起立筋を器具なしで強化するには何をすればよいのか?
それはブリッジです。理想は両手をついてブリッジの姿勢まで持っていく動作ができることです。これを繰り返すことですね。やってみると分かりますが背骨付近の筋肉に疲労感を感じますよ。
ブリッジは肩やお尻、ハムストリングスも同時に使います。
ここで問題になるのが手首の柔軟性です。手首が固ければブリッジの姿勢ができません。そのため先ずは手首の柔軟性を得ることからスタートになります。
粘りのある下半身はピストル(片足スクワット)で養う
格闘技をするうえで大事だと思うのは、筋力の他に粘りのある安定性です。
後述しますが、重いバーベルを低回数でウンウン挙げるのはあまり意味をなさないかなと思っています。それよりもピストル(片足スクワット)の方がよほど実用的だと思っています。
通常のスクワットよりも負荷がかかるうえ、バランス感覚も養われます。バランス感覚はあらゆる競技で必要であり、格闘技も例外ではありません。
筋力面に関して言えば、ある程度の回数をこなせればバーベルスクワットを日常的にやる習慣がなくてもそれなりの重量が挙がるんですよね。(ただし脊柱起立筋が強いという条件つき)
さて、ここで問題になるのがやはり柔軟性です。仮に片足スクワットができる筋力があったとしても、足首が固ければできません。しゃがんだ瞬間、後ろに転んでしまうでしょう。
先ほどのブリッジ同様に先ずは柔軟性を得ることからスタートです!具体的な体操としてはふくらはぎを伸ばすストレッチをやっていくことです。
実は私も足首が固めの方なんですが、ストレッチもやることで足首が以前より柔らかくなり、ピストル(片足スクワット)をこなし易くなりました。
なお、動作の過程で必ずしも大腿部とお尻がくっつくくらい曲げなくてもよいです。要するに鍛えたい筋肉に負荷がのればいいので。
ピストル(片足スクワット)で宙に浮かせている足は4種類の置き方があります。
- しゃがんだ際、宙に浮かせている足の甲をもう片方の足首(アキレス腱)の後ろに添える
- しゃがんだ際、宙に浮かせている足首(アキレス腱)をもう片方の足首(スネ側)の前に添える
- しゃがんだ際、宙に浮かせている足を前方の伸ばす
- 片方の足首を手で持ちながら、その足の膝が床につくまで下ろす
手順4のスクワットはシュリンプスクワットと呼ばれるもので、はお尻の筋肉も使う感じですねー。
さて、このピストル(片足スクワット)は、当然ですが通常のスクワットよりも回数をこなすことは不可能です。でもそれでいいんです。筋肉に負荷をかけることが目的ですから。
体全体の連動性を高めるならシットアップは不要。ハンギングレッグレイズを取り入れよう
シットアップ、いわゆる腹筋運動ですね。学校の部活でやりませんでしたか?実はこの運動、とても無意味だと思っています。
私はシットアップをやる習慣はありません。数年前に試して見ましたが連続300回は問題なくできましたね。まったく腹筋は疲れないし腰が痛くなりました。
実用性はあまりないってのが実感です。考えてみてください。キックやパンチをするときにシットアップをしている姿勢のようにお腹を丸めるシーンなんてあります?ないですよね?
体が動作する際、必ず下半身と上半身が連動します。必ずです。個別で動作するなんてことはあり得ません。
そこで出てくるのがハンギングレッグレイズです。股関節と同時に動かすんですよ。
公園が近くにあれば雲底にぶら下がってやるといいでしょう。ぶら下がらなくても椅子を2つ使って体を支えるやり方でもOK。
ハンギングレッグレイズには2種類にアプローチがあります。
一つは腹筋を鍛えるための動作です。腹筋を鍛えるためには、膝を少し曲げて膝を胸に持っていくイメージでやります。
もう一つのレッグレイズ系の動作としては腸腰筋を鍛えることです。それは腿上げをやることです。
腸腰筋はとてもとても実用性が問われる部位です。これは実体験によるものですね。脚力だけあってもダメです。登山で実感していることです。腸腰筋が弱いと腿が上がらなくなるんですよ。格闘技で言えばキック力が問われる部位ですね。
これが先ほど重いバーベルを低回数であげるのは意味をなさないと言った理由です。
あのブルースリーわずか61kgや62kgの体重でキレがあって凄まじい破壊力のキックを繰り出しました。大腿部の太さはわずか54cmです。お世辞も太いとは言えません。
なお、リーのデータは以前に読んだ格闘家ボディの作り方という本の写真にインチ表示されていた部分から算出しております。(今も記載してあるのかな?)
さて、そんな体格のリーがなぜあんなに凄まじい威力の蹴りを繰り出せたのか?
これはね、腸腰筋と腹筋だと思うんですよね。腸腰筋の力で凄まじいスピードで腿から先を上げ、足の先端がしなるような蹴りを腹筋の力から伝達する動作です。大腿部は力を伝達するための媒介手段に過ぎないので必要以上の筋肉量は不要だったともいえます。
例えば、ムエタイのキックの練習。腿を上げる動作って腸腰筋なんですよ。ぶっと太い脚じゃないんですよね。
パンチ力と体重と筋力の相関関係
ゲームセンターにパンチ力を測定するマシンってありますよね。男性なら一度はやったことがあるのではないでしょうか。
実はパンチ力に関してはあまり腕力の強さは関係ないかなと思っています。
高校生の頃のお話になります。私は懸垂が強くなって上背が15cm、体重も20kg近く上回る相手にも勝てるようになっていました。
ところが、その彼のパンチ力は私の数値の1.3倍ほどありましたよね。もちろん、打ち方のコツなどもあるのでしょうけど。
一体、何が違うのか?彼は身長が高いので上から体重を乗せるように打っていたんですねー。この差はとても大きいです。
もう一つ説得力のある事例をご紹介しましょう。
プロテインをガンガン飲んでウェイトをバリバリやってそうなバルキーなボディのアメリカ人がパンチングマシンを打った時の話です。
彼の身長は高くありませんでした。多分170cm切るくらい?体重は90kg近くあったんじゃないでしょうか。腕はぶっと太くて血管はゴリゴリ浮き出ていて、それはそれはとても強そうな人に見えました。ベンチなんて軽々150kg上げそうな体してましたよね。
彼がパンチを打った時の記録は….。私の同級生と同じくらいだったのです。彼は何度も打ってましたが数値はあまり変わりません。私も打ってみましたが以前に使ったマシンとそれほど数値が変わるものではありませんでした。
共通点はこの中で登場した人物は誰しもがパンチを打つということに関しては素人だということです。
要するに素人という領域では、体重を上手く乗せるスキルがある人間が一番効率よく破壊力あるパンチを出せるってことですね。
じゃあ、そのパンチを打った時に支える筋肉はどこなのか?というと肩かなと。
実用的な肩を作るのは逆立ち腕立てである
カッコいい肩を作るのと、実用的面で支える肩を作るのではアプローチの仕方が異なるという持論を持っています。
フィジーカーやボディビルダーみたいな形のいいバルキーな肩を作り込むなら、ウェイトを使ったサイドレイズをワークアウトの一環として取り入れるべきです。
しかし、パンチをする動作でサイドレイズなどの動作ってあり得ないですよね?
動作をするうえで実用的な肩を作るなら逆立ち腕立てをすることです。
壁際でやるとやりやすいでしょう。肩と上腕三頭筋(押すための動作)を一緒に鍛えることができますよ。手幅は肩幅か拳一つくらいかな。顎を床に近づけるイメージでやります。
組み技系なら懸垂は必須です
レスリングや柔道では相手を掴んで自分の方へ引き寄せる筋力の強さが問われます。
ここで先ほど書いた脊柱起立筋や下半身の強さが問われます。なぜならば、引き寄せた力を胴体や足で支えられなけらば自分の体が上腕の力に負けて持っていかれるからです。
さて、その引き寄せる力を鍛えるのは何か?それは懸垂です!格闘技においては2種類の懸垂が重要かなと。
それは前腕(握力と腕橈骨筋:わんとうこつきん)、それから広背筋をターゲットにした懸垂です。
広背筋を鍛えるための懸垂
絶大な引き付ける力を発揮する筋肉が広背筋です。広背筋を鍛えるのは懸垂です。世の中には手幅を広くしてやれだとかいう情報もありますが、手幅は肩幅に拳一つか二つ分くらい空ければ十分だと思っています。
相手を引き付ける際、ワイドな手幅で引くことってあります?ないですよね。ならば実用面に即した動きを取り入れましょう。
握りは順手です。背中を反って胸をバーにつけるようにできる回数をこなします。
広背筋だけ強くなっても意味がありません。体の末端である握力と腕橈骨筋が弱ければその力を伝達できないからです。とは言っても懸垂をやることに伴い強くなってくるのですが。
更に握力と腕橈骨筋を強くする懸垂も併用しましょう。
握力と腕橈骨筋を同時に鍛えるための懸垂
はっきりと言いましょう。グリップなんぞ必要ありません!(持っているけどほとんど使ってないんだ)。実用面に即した動作を取り入れましょう!よく考えてみてくださいね。あなたは握る動作ではなく掴む動作をしたいのですよね?
それならタオルを鉄棒などにかけてタオルを掴んだ懸垂をやりましょう。手幅はお好きなやつで。肩幅か少し狭目でいいと思います。握り方はパラレルがオススメです。
相手を掴んで手前に引き寄せる動作では、広背筋はもちろんですが、握力と腕橈骨筋を使う動作が多いですよね。例えば柔道着はどうやって掴みますか?手の平が真横になりませんか?つまりパラレルハンドです。
パラレルハンドで引く動作では力こぶよりも腕橈骨筋を使う割合が多いのです。
以上、登山という舞台を通じてワークアウト手法を開拓してきた私の視点から格闘技にも流用できるであろうワークアウトをご紹介しました。
是非、使えると思ったワークアウトは取り入れてみてくださいね。
それでは。