よく広角レンズは2mmの差で世界が大きく変わるという言葉を聞きます。
これから広角レンズの購入を検討している最中に
「2mmの差で世界観が変わるんだぜ」
と言われても、ご自身で体感しないことには漠然としたイメージしか抱くことができないのではないでしょうか。
さぁ、困った!どうしましょう?
2mmの差をイメージできる方法があります。
それは焦点距離から撮影できる範囲を算出しておくことです。
もくじ
焦点距離別から算出する撮影可能範囲
では、実際に焦点距離別に撮影できる範囲を計算してみましょう。
計算式は (被写体までの距離 × センサーのサイズ)÷ レンズの焦点距離 です。
イメージセンサーのサイズは以下の通り。
- フルサイズ機:水平が36mm × 垂直が24mm
- APS-C機: 水平が23.6mm × 垂直が15.7mm
- マイクロフォーサーズ機:水平が17.3mm × 垂直が13mm
下表はフルサイズセンサー機で算出したものです。
撮被写体までの距離は10mです。
( ※水平と垂直の計算は小数点以下、四捨五入)
焦点距離 | 代表的なレンズ | 水平 | 垂直 |
10mm | HELIAR-HYPER WIDE 10mm F5.6 Aspherical | 36m | 24m |
11mm | EF11-24mm F4L USM | 33m | 22m |
12mm | SIGMA 12–24mm F4 DG HSM | 30m | 20m |
14mm | AF-S NIKKOR 14–24mm f/2.8G ED | 26m | 17m |
15mm | TAMRON SP 15–30mm F/2.8 | 24m | 16m |
16mm | CANON EF16-35mm F4L IS | 23m | 15m |
17mm | CANON EF17-40mm F4L USM | 21m | 14m |
20mm | AF-S NIKKOR 20mm f/1.8G ED | 18m | 12m |
24mm | AF-S NIKKOR 24mm f/1.4G ED | 15m | 10m |
28mm | AF-S NIKKOR 28mm f/1.4E ED | 13m | 9m |
私が使っているのはAPS-C機ですので、こちらもみて見ましょう。
代表的なレンズとして、FUJIFILMとPENTAXを例に出しますね。
撮被写体までの距離は10mです。
計算の都合上、若干の誤差はあります。
( ※水平と垂直の計算は小数点以下、四捨五入)
焦点距離 (フルサイズ換算) | 代表的なレンズ | 水平 | 垂直 | 備考 |
8mm(12mm) | XF8-16mm F2.8 R LM WR | 29m | 21m | 10mmより 25%広い |
9mm(13.5mm) | LAOWA 9mm F2.8 ZERO-D | 26m | 19m | |
10mm(15mm) | XF10-24mmF4 R OIS | 23m | 17m | 12mmより 20%広い |
11mm(17mm) | DA 11-18mmF2.8ED DC AW | 21m | 15m | |
12mm(18mm) | SAMYANG 12mm F2.0 | 20m | 14m | 14mmより 16.7%広い |
14mm(21mm) | XF14mmF2.8 R | 17m | 12m | 16mmより 14.2%広い |
15mm(23mm) | DA15mmF4ED AL Limited | 16m | 11m | |
16mm(24mm) | XF16mmF1.4 R WR | 15m | 10m | 18mmより 12.5%広い |
18mm(28mm) | XF18mmF2 R | 13m | 9m | |
21mm(32mm) | DA21mmF3.2AL Limited | 11m | 8m | |
23mm(35mm) | XF23mmF2 R WR | 10m | 7m |
見ての通り焦点距離が短くなるほど、2mmの差による撮影可能範囲の広がりが指数関数的に増えていきます。
しかし、実際の撮影では足元から遠くに伸びるパースペクティブを強調したいのではないでしょうか。
となると、気になるのが近距離で撮影した際、遠景はどこまでの範囲がフレームに入るのか?
ということですね。
流石に計算では難しいのでこれから実例(APS-C機で撮影した場合)をあげます。
パースペクティブの王者:10mm(換算15mm)
焦点距離 | 被写体までの距離 | 水平に入る範囲 | 垂直に入る範囲 |
10mm | 3m | 7.1m | 4.7m |
距離感は手前の石までで3m前後だったかと思います。
- (被写体までの距離 × センサーのサイズ)÷ レンズの焦点距離
を当てはめると、垂直方向に5m近くの範囲がフレームに収まります。
鳥居の高さを考えると妥当なところではないでしょうか。
10mm(換算15mm)は数m先にある被写体をフレームに収めるのに便利な画角です。
実はAPS-C機における10mm(換算15mm)のレンズの選択は限られています。
- XF10-24mmF4 R OIS(FUJIFILM)
- SIGMA10-20mm F3.5 EX DC HSM(キャノン、ニコン、ペンタックス)
- E 10-18mm F4 OSS (SONY)
が現実的な選択肢になりますね。
マイルドなパースペクティブを得るなら12mm(換算18mm)
焦点距離 | 被写体までの距離 | 水平に入る範囲 | 垂直に入る範囲 |
12mm | 0.8m(だと仮定) | 1.57m | 1.04m |
長さ1mほどのストックの真下から撮影をしました。
ストックの全景を収めるにはギリギリな感じでした。
こういう場面で10mmとの差を実感します。
そりゃそう、10mmより20%狭い範囲での撮影になっちゃうんですから。
しかし、風景のパースペクティブを効かせたい時は使いやすい画角となります。
10mm(換算15mm)との差は、近距離で撮影したとき、
- パースペクティブを効かせたい被写体をラクに入れたいかどうか?
というところになるのではないかと思います。
12mm(換算18mm)は先に挙げた広角ズームレンズでカバーできる画角ですがミラーレス機用に単焦点レンズも出ていますよ。
マニュアルレンズとなりますが、
キャノンEOS M、SONY α Eマウント、FUJIFILM Xマウント用
にSAMYANG 12mm F2.0 がありますよ。
サムヤン 12mmは星景撮影に向いたレンズですが風景撮影にも使えます。
歪みが少なく広く切り取れる14mm(換算21mm)
この雪渓の幅は10m程度でしょうか。
14mm(換算21mm)の広角レンズを使うことによって雪渓の斜面全体をフレームに収めることができます。
21mm相当の画角になると広角特有の歪みがなくなってきます。
自然な形で広く撮影したい時に使うといい画角だなと感じています。
14mm(換算21mm)も同様にズームレンズでカバーできる画角になります。単焦点レンズもありますね。
- DA14mmF2.8ED(ペンタックス)
- XF14mmF2.8 R(FUJIFILM)
- SAMYANG 14mm F2.8 ED(サムヤン)
以前、SIGMA10-20mmで14mm固定で撮影していた時期がありました。
ペンタックスから明るい広角レンズが出てこないものですから、サムヤン14mm F2.8を星景撮影用に使うことを想定していたからです。
ついでに風景も撮りたいから14mmという画角が自分に合うかどうかを確認するという意味もありました。
風景撮影を目的とするならズームレンズでも賄えるので、単焦点でなければならない理由がなければズームでいいと思います。
特に10-14mm辺りの画角は、1mmや2mmの差がとても大きいです。
少しでも画角の調整が効くズームレンズの方が動きやすいかなと。
オールマイティなシーンで応用が効く16mm(換算24mm)
超広角レンズの入り口とも言われる換算24mmの画角ですね。
歪みがなくなり、自然な広さを表現できる領域に入ってきます。
山や旅先の風景を撮影するには程よい広さになりますよ。
16mm(換算24mm)ならハイアングルから撮影してもさほどパースペクティブが効かなくなりますが、広さは伝えることができます。
言い換えればオールマイティなシーンで応用が効く画角になります。
16mm(換算24mm)と言えば、各社共に標準ズームレンズで採用する広角側の画角でもあります。
キットレンズというよりは一歩ランクが上のレンズで見かけるラインナップですね。
- ペンタックスからはDA16-85mmF3.5-5.6ED DC WR
- FUJIFILMからはXF16-55mmF2.8 R LM WR
が出てますね。
この辺りからは単焦点レンズに特化した撮影の方が面白みを感じますね。
理由。
- 大口径ゆえの明るさ
- 広角でありながらボケ表現を作れる
からです。
フルサイズ機でも最短撮影距離25cmですこぶる評判が高い AF-S NIKKOR 24mm f/1.4G ED がありますね。
このスペックに相当するAPS-C機の広角レンズと言えばFUJIFILMのXシリーズ用広角単焦点レンズ XF16mmF1.4 R WRです。
私はこのレンズでスナップ、風景、接写、夜景などで使っています。
広角のスナップ撮影で使いたい18mm(換算28mm)
APS-C機であれば18-55mmや18-135mmのレンズを使われる方も多いのではないでしょうか。
18mm(換算28mm)はスナップシューターの代表的な高級コンデジ・リコーのGRシリーズの18mmと同じになりますね。
この画角になると足元から圧倒的な広さを表現するという手法は使わなくなります。
遠景の全体像をほどよくスナップ撮影していくのに程よい広さを持っている画角になります。
18mm(換算27mm)も単焦点レンズや先に挙げたGRシリーズのように高級コンデジ化されています。
旅先でのスナップ撮影にも使いやすいですよね。
個人的には防塵防滴対応だったら山用のサブ機として欲しい感じです。
単焦点レンズならFUJIFILMからXF18mmF2 R
高級コンデジなら同じくFUJIFILMからXF10が出ています。
リコーのGRシリーズ同様にAPS-Cセンサーが搭載されており、一眼レフ機やミラーレス一眼に匹敵する画質を得られるのも大きな魅力です。
ストリート撮影的に使いたい20mm(換算30mm)
この画角になると準広角域に入ってきます。
街中でもこの画角を使う人は多いのではないでしょうか。
人間の目に違和感がない広さで風景をパシャパシャ切り取っていける画角でもあります。
APS-C機には20mm(換算30mm)に近い画角の単焦点レンズがあります。
ペンタックスからはDA21mmF3.2AL Limited
FUJIFILMからはXF23mmF2 R WR
が出ています。
どちらも評判の高いレンズですよね。
以上、事例を挙げてみました。
ポイントは広角になるほど
「たったの2mmの差が大きく影響してくる」
ということです。
広角撮影の教科書には作例と共に焦点距離別の広角レンズの使い方が解説されています。
広角レンズの購入でお悩みの方は一度手にとってみてはいかがでしょうか。
それでは。
- (換算15mm)XF10-24mmF4 R OIS
- (換算18mm)SAMYANG 12mm F2.0
- (換算21mm)XF14mmF2.8 R
- (換算23mm)DA15mmF4ED AL Limited
- (換算24mm)XF16mmF1.4 R WR
- (換算28mm)XF18mmF2 R
- (換算32mm)DA21mmF3.2AL Limited
- (換算35mm)XF23mmF2 R WR