リアス式海岸の代表格として外せない名所が三陸の北山崎(岩手県・田野畑村)です。この一帯は地形が複雑に入り込んでおり変化に富んだ景観を楽しめる場所です。
「みちのく潮風トレイル」のコースにもなっている「北山崎自然遊歩道」は黒崎漁港から明戸キャンプ場まで間には、漁港、浜辺、断崖、素掘りトンネルありとバラエティー豊かなコースです。その距離、20kmにも及びます。(後述しますが、この日、私は27km歩きました。)
そんな「北山崎遊歩道」ですが、実際に歩いてみて、蕪島から種差海岸のゆるふわトレッキングとは対照的にアグレッシブな印象を受けました。
メモ
・車を明戸キャンプ場にデポ(前泊してテントも張った)
・歩いて田野畑駅へ←(今回の記事はここから)
・田野畑駅から電車で普代駅へ移動
・普代駅〜黒崎〜北山崎〜明戸キャンプ場までトレッキング
※歩いた日は5/4
「みちのく潮風トレイルは」車を一箇所にデポしてスルーハイクするか、回収しながら歩くか悩むところですが、今回は日毎に車を回収しながら歩きました。やり方としては熊野古道を歩いた時と同じです。
もくじ
明戸キャンプ場から田野畑駅まで歩く
前日に明戸キャンプ場に泊まりました。素敵な場所ですよ。詳細はこちらの記事で。
参考:明戸キャンプ場
テントと車をデポして田野畑駅まで40分ほど歩きます。時刻は4:57。
5分も歩けば国道44号線が走っている海岸に出ます。
ひらいが海荘の前の看板に、津波によってここまで浸水したことを示しています。
海はこんな感じ。
奥の砂浜には震災遺構 明戸海岸防潮堤があり、決壊した防波堤がそのまま残されています。今ではサーファーが波乗りを楽しむ場所にもなっており、朝からサーフボード積んだ車が入ってきていました。
ホテル羅賀荘。トレッキングを終えた夕方、ここで日帰り温泉に入りました。
参考:ホテル羅賀荘 お風呂
まだ完全復興をしてないんですね。仮設店舗の看板があります。
田野畑駅に着きました。
みちのく潮風トレイルの看板。歩くのが好きな人たちが来れば、この地域も復興に繋がっていくのでしょう。
田野畑駅に車をデポしてトレッキングをしたい人もいるかと思いますが、10台ほど駐車できる感じでした。朝一番の電車なら問題ないかと。
5:50発の久慈行きの電車に乗り込んで隣の駅、「普代駅」まで行きます。時間にして9分の乗車です。
普代駅から黒崎は震災の爪痕を感じるコース
普代駅から海まで出て海岸沿いを歩くわけですが、震災の爪痕が未だに残されていることを感じます。
地形を見て分かる通り普代川の脇は山です。こんな場所に津波が来たら水の逃げ道はなくなって水位がどんどん上昇してしまいます。
ここが普代駅。
普代川沿いに走っている国道44号線を歩いていきます。道端にはこごみが。
普代水門。
津波は23.6mに達したそう。
国道44号線に走る水門の扉。津波が来たらここを閉めるのでしょう。
後ろを振り返る。普代水門のおかげで普代小学校は甚大な被害をまぬがれたそうです。
今はのどかな普代浜。
普代浜から黒崎までは海岸沿いを歩きます。
太田名部(おおたなべ)漁港の近くまでやってきました。新しいテトラポッドです。三陸海岸沿いではこんな場所をチラホラ見かけますね。
太田名部漁港は第2種漁港に属します。 第2種漁港とは農林水産省の「漁港の指定等に関する基準の制定等について」によると以下のうち3つを満たしているものなそうです。
・地元漁船が50隻以上 または 当該漁船の総トン数の合計が500トン以上
・利用漁船が25隻以上 または 当該漁船の総トン数の合計が250トン以上
・年間属地陸揚量が1,125トン以上
・係留施設、幅員3メートル以上の臨港道路、荷さばき所があること
そんな大田名部港漁港は三陸の漁場の心臓部といわれているそう。
ここにも扉が。普代水門よりは周囲が山で囲まれてないせいか、ここの津波は11.6mだったみたい。地形によって倍以上の水位になっちゃうんですね、という事実は現場に行って地形を見てみないと実感できないかもしれません。ニュースの記事や写真だけじゃ分からない。絶対に。
かつて、津波で甚大な被害を受けたであろう場所にも緑が宿りタンポポが生えていました。自然って凄いですよね。
トンネルも歩くんですよ。国道44号線を田野畑方面に南下している最中です。
綺麗。
世間はGWですがガラガラです。快適に歩けました。人混みが嫌いな私としてはとても都合が良い。
下に見えるのは黒崎漁港。「北山崎遊歩道」の起点でもあります。ここから明戸キャンプ場まで20kmあります。
本当はこの階段を下る筈なんすが、通行禁止になってました。仕方がないので迂回して車道を歩いてきました。
実はここの対岸にある山の斜面からクマが2匹声を発しながら下ってくるのを目撃しました。物理的にこちら側には来れないので暫く観察してましたが、こちらの様子には気付いてない様子でした。
黒崎漁港まで下ってきました。
こんな場所を歩くんですよ。リアス式海岸独特の地形をトレッキングするのって新鮮です。
この日、初の素掘りトンネルです。
まるで高熱隧道みたいな世界。涼しいんですけどね。
トンネルを出るとネダリ浜です。釣りをしている方々がいました。
ネダリ浜からは断崖地形を登っていきます。山歩きをする習慣がない人、持久系の運動習慣がない人にとっては少しキツイかもしれません。
危険箇所はありませんが、結構な急登です。地形的にはこんな感じ。
写真ではこんな具合。新緑が綺麗ですね。
黒崎荘。実は前日、ここでランチを食べれるか確認をしたのですが、今はランチをやってないそうです。どのみち、トレッキングをした日はここに着いた時刻が8:46ですからランチには早過ぎましたね。
参考:国民宿舎 くろさき荘
黒崎から北山崎は単調な森歩きが続く3時間続くコース。端折ってもいいかな
黒崎から北山崎のトレイルは単調なんです。
新緑の樹々が綺麗です。
こんな雰囲気の場所を3時間歩きます。単調。
危険だから通るなと。橋が崩落しそうなんです。ここね、コースとして紹介されているんですよ。もうちっと地図上の情報と実態に連携を持たせて欲しいものです。管理が大変なのかもしれませんが。
新緑は抜群に綺麗。そして、人がいません。静かです。しかし、注意点もあります。時折、熊の糞があるし、ベンチを齧ったであろう形跡が見受けられました。
ここからが問題。登山経験者でないとキツイかも。沢沿いに谷間に下って登り返えします。とても海が近くにあるとは思えない雰囲気なんですよ。
もちろん北山崎に辿り着く前にもう一度登り返さなければなりません。かけた時間に対する幸福度は低いかな?って気もするので、ここのコースは端折ってもいいかなと思いました。
ですから、くろさき荘からは普代村営バスが運営する「村内周遊観光バス」に乗車して北山崎まで移動するといいかもしれません。土・日・祝日限定ですが「くろさき荘前」を9:15出発、「北山崎」着が9:25です。料金は無料です。(2019年5月現在)
普代村 公共交通 (村営バス時刻表の村内周遊観光バス時刻予定表を参照)
普代駅からトレッキングを開始したのが6時。くろさき荘に着いた時刻が前述した通り8:46ですからバスの時間的にも丁度いいです。
歩いて北山崎まで来ましたがこの時の時刻は12:10でした。この後、実際の地図上のコースタイムよりも時間が掛かることが判明するのですが、バスで時間を短縮するのはありだな、と強く感じましたね。というのも、この後のコースが面白いのでじっくりと時間をかけて歩く余裕が欲しいのです。
北山崎レストハウスでは、磯ラメーンと生うに丼を食べました。
詳細はこちらの記事参照
翌日、船の上から北山崎を眺めることになります。
北山崎から明戸キャンプ場は変化に富んだダイナミックなコースの連続。とても楽しい
北山崎より南が本当のハイライトです。ここからは変化に富んだコースが待ち受けていますよ。
再び歩き始めた時刻が13:10。階段を一気に下ります。
海の真ん前まで来ました。
そして階段の登り返し。体力ない人はしんどいと思います。
ぐんぐんと海から遠ざかり俯瞰できるくらいの高さまで来ました。
そして、気持ちのいい森歩き。
翌日に乗ることになるサッパ船が走っています。
この日はカモシカを3回見ました。ちとレンズの焦点距離が足りません。XF50mm F2R WRで撮影しました。
再び標高を下ろし海岸沿いへ。丁度、国道44号線とトレイルが交差する辺りです。
ここからトンネル歩きが始まりますよ。時刻は14:33。
ここのトンネルは楽勝です。
トンネルを出て後ろを振り返る。
岩を乗り越えてハシゴを下ります。これからこのトンネルを歩くのです。ところで、岩が崩れてますけど….
おいおい、ヤバイんじゃないの?
下ってきたハシゴはラバー製でした。後ろに体重をかけようものならハシゴが岩場からポロリと外れそうで恐いです。下手したらそのまま落下して打ちどころ悪くて天国行きですからね。山ではあり得ない造りですよ。高潮の影響などでこうせざるを得ないのかもしれませんが。
このハシゴは要注意箇所として覚えておいた方がいいです。具体的な場所です。
ハシゴを下って一息。
気持ちを切り替えてトンネルへ。ヘッドライトは必須です。ヘッデンないと手探りで歩くしかないですよ。
私は距離センサーがついているヘッドライト(マイルストーン MS-B3)を使っています。照射物が近くにあるとライトの光が自動で弱くなります。
わーい、トンネルが終わったぜー。暗くて狭い場所は嫌いなんだ。と思ったものの前方にまたトンネルが見えました。
相変わらずプライベート感溢れる景色です。
そして、もう一つのトンネルへ突入。真っ暗ですよ。真っ暗なトンネルが大嫌いな人にいい方法をご紹介しましょう。ただしカメラが必要です。
ヘッドライトで前方を照らしながら、ミラーレス一眼を手に持って動画モードに切り替えます。動画は撮影しません。目的はカメラのモニターでトンネル内の様子を映像として出力するだけです。
ISOを12800に固定し、レンズを広角側に設定し、絞り開放にします。実際に人間の目で見るよりも周囲の様子がモニターを通じてよく見えます。イメージセンサーのお陰ですね。お試しあれ。
トンネルが終わりました。ですが、ここであることに気付きます。妻がサングラスを紛失したんです。トンネルに入る前に胸ポケットに入れたらしくどこかで落下したらしいと言うのです。
えー、そうです。戻りましたとも。私が単独であの暗いトンネルを。暗くて狭い場所は大嫌いなので走りましたね。ダッシュですよ、ダッシュ。サングラスは一つ目のトンネルの入り口に落ちていました。
また、登り返し。北山崎遊歩道はアップダウンが多いですね。
位置的にはこの辺りです。
まだまだ登る。
登り返したらまた下るのは慣れっこ。東日本大震災の津波到達ラインの印がありました。
机浜番屋群(つくえはまばんやがい)へ到着。
翌日、ここからサッパ船に乗ることになります。机浜番屋群は未来に残したい漁業漁村の歴史文化財産百選の一つで、ウニやワカメなどが特産品になっています。
こじんまりとしていて好き。
あとは国道44号線沿いに歩き明戸キャンプ場へ向かいます。地図上ではこの道路です。
遠くにホテル羅賀荘が見えますね。あとでここで日帰り入浴をしに行きました。
再び朝歩いた道へ。直進すると田野畑駅に行きます。明戸キャンプ場へ行くには右折します。
明戸キャンプ場の近くには植林がしてありました。この辺りも津波で甚大な被害を受けたのでしょう。
明戸キャンプ場に戻ってきました。時刻は16:27。朝6時に普代駅からスタートして、10時間30分の行動、距離25km(*)に及ぶトレッキングが終わりました。
(*)実際には27km歩いています。
・明戸キャンプ場〜田野畑駅 2km
・普代駅〜黒崎漁港 5km
・黒崎漁港〜明戸キャンプ場 20km(この区間は北山崎遊歩道)
いかがでしたでしょうか。体力に自信がある方なら1日でスルーハイクできちゃいます。個人的な感覚。足に怠さを感じましたが、普段から山を歩いているお陰でそんなに苦にはなりませんでした。
全体としては変化に富んだ景色が楽しめますし、震災のことを少しでも知るキッカケにもなりますので挑戦する価値はアリです。興味のある方は歩いてみてはいかがでしょうか。
それでは。
撮影機材
この日はXF10-24mm F4とXF50mm F2R WRの2本だけ持ち歩きました。