うーん、燕岳ねぇ….
と思っていた自分がいたのですが昨年辺りから
「ん?燕岳って実はいい場所なんじゃないのか!?」
と心境の変化がありまして。
そして今年は「おお!いい場所じゃん?」と思っている自分がいます。
食わず嫌いだった側面があったんだすねぇ。
燕岳は「北アルプス初心者の山」そんな位置付けで紹介されることが多いように感じますが、それは「歩く行為」に対する価値観の一つにしか過ぎません。
ここの領域ばかりクローズアップしてしまうと盲目的になってしまいます。
「多彩な景色に出会える場所」という価値観にシフトしたらどうなの?ということを考えた場合、燕岳はすごいポテンシャルを秘めた山であると言えるんですよね。
当記事では
・燕岳に対して感じていたこと
・なぜ、燕岳に対して食わず嫌いだったのか
・燕岳のポテンシャル(写真多め)
について順を追ってご紹介していきます。
もくじ
「えーぇ?燕岳かよっ!」
燕岳に対しては何もかもが浅く見えてしまうという状況が何年も続いてました。
マンネリ化というやつですね。
しかし、そんな燕岳に19回も行っていたんですねぇ。
(※その後、1回行ってるので合計20回です!)
その理由は手軽に行けて、かつ、それなりの展望を期待できる場所だからです。
なぜ、手軽に行けるのかというと…
登山行為に対するリスクという領域に目を向けた場合、
・滑落リスクがない(転がろうと思えばそういう場所もあるけど一般的に)
・道迷いをしてしまうリスクがない(地形、登山道が明瞭、分岐がない)
・悪天候の影響を受けにくい(合戦小屋まで樹林帯)
樹林帯は合戦小屋より少し上の標高約2400m付近まで続きます。
荒天なら合戦尾根に入る前に引き返せば安全地帯に戻ることができます。
つまり、地形的に安全地帯に退散しやすいと言えます。
簡単に行けてしまう山はどこか?
相棒:「燕岳にしとく?」
私:「えぇー?燕かよっ!」
というのが日常茶飯事でした。
「でもまぁ、残雪期と初冬くらい行ってやるか。あまり混んでねぇーし。」
てな具合に結構な回数行ってたんですよね。
なぜ「燕岳ねぇ….」と思っていたのかというと
・人混み(無雪期は辟易してしまう人の多さ)
・合戦尾根に出るまでの単調な樹林帯歩き
・燕岳から見る景色(いいんだけど)にマンネリ化を抱いていた
と言ったところです。
そんな燕岳は、
燕岳よりも裏銀座のほうが格上
燕岳よりも東北の山のほうが深みがある
燕岳よりも白馬岳縦走のほうが圧巻を楽しめる
燕岳は浅くて軟派でメルヘンチックな山
そんな位置付けの山でした。
なぜ、燕岳ねぇ….って思っていたのか最近、理由がわかってきた
合戦尾根辺りからは展望もよく景色がいい山なのですが、一つ難点をあげるとすれば単調な樹林帯歩きです。
燕岳は合戦小屋へ行くまでに幾つか景色が見えるポイントがありますが、基本的には樹林帯歩きです。
第1ベンチ、第2ベンチ、第3ベンチ、富士見ベンチ、そして合戦小屋、と言う具合にポイントを通過していきますが、特に目を見張るものはなくつまらないです。
しかし、この退屈な区間を短時間で通過することができるようになれば、あまり「つまらない」という感情は湧き上がってこなくなりました。
基礎体力の向上によりあまり退屈さを感じなくなったかもしれない
1つは基礎体力の向上ではないかと思っています。
もちろん当時も基礎体力は備えておりましたが、明らかに今の方が基礎体力があるんですよね。
ソロで行った山行で比較してみましょう。
山行ごとに、登山道の状態、気温差、体のコンディションなどが異なるので完全な比較ができているとは言いませんが、一つの指標になるのではないかと思います。
日帰り装備の場合
2011年の残雪期(5月頭)行った際には、3時間20分かかってました。
登山道の状態としては、第二ベンチから残雪がありましたが踏み固められた状態です。
当時はまだ本格的にカメラを始めてませんでしたし、今のようにレンズを何本も持ち歩くなんてことはなく荷物もコンパクトでしたね。
今年2019年の11月は日の出に合わせてナイトハイクをしてきました。
合戦尾根からは薄らと雪がありましたが、ほぼ無雪期の状態で歩くことができました。
かかった時間は中房温泉から燕山荘まで2時間30分でした。
途中で星空撮影をしたり、夜明けに合わせてレンズ交換をし景色を撮影しながらです。
荷物は交換レンズ4本、水2L、防寒具等を持ち歩いてましたので、2011年当時よりも荷物は重いですね。
登山道の雪の有無の差、日中(遊びながら歩いている可能性もある)とナイトハイクの差はありますが歩くペースが速くなっています。
テント泊装備の場合
あまり比較となる条件がないのですが、事例を挙げておきましょう。
2013年の秋は大天井岳までの縦走装備で燕山荘まで4時間で歩いてました(相棒と)。
荷物は22〜23kgあったと思います。
2015年の梅雨明け前に大天井岳までの縦走装備行った際は、燕山荘まで3時間30分で歩いてました(ソロ登山)。
やはり荷物は22〜23kgあったと思います。
混雑する時期ですから歩く効率も決していい条件とは言えません。
ソロなのか人同伴なのかで条件が異なりますが、やはり歩くペースが速くなっています。
積雪期の例も挙げましょう。
昨年2018年の初冬は積雪の中、テント泊装備で3時間50分で上がってましたね。
カメラ2台、レンズ4本、三脚なども持ち歩いてです。
40人ほど20パーティほどの登山者を追い抜いて登ったかと記憶しています。
さすがに梅雨の季節とは登山道の状態が違いますし、アウターなども着込んで動作効率も落ちていますが、それでもいいペースなのではないかと思います。
何が言いたいのかというと、同じ条件であれば以前よりも上がるペースが速くなっていて、単に歩くだけでなく、楽しみを持ちつつ歩くようになったので、苦痛を感じなくなったということです。
楽しみというのは、どこまでどのくらいのペースで行けば、どのような風景に出会えるのかということを知ったことによって得たものです。
それなりの回数訪れたことによって自分の中に浸透してきたものと言えます。
と、ここまで書いたところで、燕岳に感じ始めている魅力について語りましょう!
燕岳の本当の価値は燕岳から見た槍ヶ岳、大天井方面の稜線にある
実は燕岳の三角点というかイルカ岩だったり、メガネ岩がある奇岩体辺りまでは昨年の11月に到るまでに立ったの1回しか行ったことがありません!
燕岳にはそれなりの回数訪れていますが大半が燕山荘まででした。
年によっては合戦尾根まで登って槍ヶ岳だけ見て下山するなんてこともありましたね(それなりにいい景色見れますし)。
私の中では燕岳はインスタント的で手軽な場所みたいな扱いだったわけです。
そして、昨年の11月にテント泊で登った際にナイトウォーキングした時に奇岩体がある辺りまで訪れたのが2回目でした。
この時に初めて「燕岳って結構いいんじゃない?」って感情が芽生えたわけです。
なぜ、今まで気づかなかったんでしょうねぇ〜(気付くの遅すぎ)。
これに味を占めてしまいまして今年は残雪期は逃したものの11月に2回も行ってしまいました。
うち1回はナイトハイクで朝焼け狙い、もう一回は朝から登り日中の雰囲気を楽しみました。
燕岳の価値は奇岩体から見る稜線にあります。
燕山荘からはこんな景色は見られません。
奇岩体まで行かなくちゃ。
めがね岩。
日中なら太陽とコラボ、月明かりの夜なら光とのコラボ、新月なら星とコラボできますよね。
大天井岳方面まで伸びる稜線。
同じ場所でも雲、光の有無で多彩な景色に出会うことができますね。
燕岳のポテンシャル
山に登る目的を突き詰めると景色ですよね。
そう、燕岳は多彩な景色に出会えるポテンシャルを秘めた場所なんです。
今まで白馬岳や裏銀座などの稜線のほうが上だと考えておりましたが、燕岳には燕岳なりのいい場所があります。
多彩な表情で槍ヶ岳を見ることができる
こちらの記事にも多数の写真を掲載しましたが、少し紹介しておきましょう。
燕岳からは様々な表情の槍ヶ岳を見ることができます。
夕方なら逆光のシルエット。
朝なら陽光に染まるモルゲンロート 。
日中なら順光の槍ヶ岳。
360度、山々が見える
言わずもがな。
好天なら富士山、南アルプス、八ヶ岳、裏銀座、穂高連峰、後立山連峰、浅間山、妙高系の山々が見えます。
五色ヶ原。
野口五郎岳。
雨飾山。
浅間山。
双六岳。
という具合に、好天なら360度に連なる山々を見れるわけです。
星の撮影を狙える
松本盆地が眼下に広がっている場所にあるため、公害がある場所だ!なんて考えていました。
月明かりがあっても夜の撮影を楽しめる
燕岳の稜線はとても歩きやすいです。
月夜だとヘッドライトがなくても歩けるくらい明るいですね。
燕岳には撮影のオブジェとなりそうな奇岩がたくさんあります。
月の明かりを借りて撮影をすると楽しいですよ。
つまり、夜の撮影に関して言えば、新月だろうが満月だろうが楽しめるということです。
富士山の撮影を狙える
富士山と言えば高ボッチ高原や三つ峠で撮影される方が多いですが人多いですよね。
掲載される写真には唯一無二の世界観が表現されますが、その裏には泥臭い争奪戦が甲斐見えちゃいますね…。
燕岳ならそんなことないですよっ!
多くの人が燕山荘の辺りに集中してますが、望遠レンズを持ってイルカ岩より少し先までまで歩いてみましょう。
人もまばらですし、自分のパーソナルスペースも十分に確保できるので、ガッツリと富士山を狙えますよ。
こちらは今年の11月にナイトハイクをし、朝の陽光を浴びる富士山を300mm相当の望遠レンズで狙ったものです。
こちらは、昨年の11月にテント泊をした際に朝焼けの富士山を狙ったもの。
換算137mm(XF90mm)で撮影。
雲海を狙える
もちろん、それなりの標高がありますし雲海だって狙えちゃいます。
特に11月は下界が霧で覆われる日が多いので、狙い目です。
この写真なんてまだ合戦小屋に着く前に撮りましたからね。
もちろん、望遠レンズで撮影しました。
という具合に雲海を狙えるわけです。
突き詰めると楽しみ方のバリエーションは広い、ゆえにレンズは何を持って行っても幸せになれる
はい、燕岳は様々な楽しみ方(特に景色)ができるので、何のレンズを持って行っても幸せになれます。
実体験をもとに紹介しましょう。
残雪期か初冬(晩秋)以外、滅多に行くことがありませんが、もし、グリーンシーズンに行くとしたら樹林帯では短焦点レンズを使いますね。
こちらの記事にも書いてますが、樹林帯から遠景を撮影するには中望遠単焦点レンズ(換算76mm)くらいが丁度いいですね。
ここ2シーズンほどの初冬の登山過程では標準ズームレンズを使っています。
緑が少なくなってくると登山過程で単焦点レンズで撮影したいと思う被写体が減ってくるというのが理由の一つ。
手軽に撮影できるマイクロフォーサーズ規格のカメラとレンズの組み合わせです。
富士山や雲海を狙うなら望遠レンズです。
どのみち、F8やF11まで絞って撮影するのでF2.8通しのレンズは要らないですね。
しかし、何かの被写体と絡めて山肌をバックに撮影する時はやっぱり単焦点レンズです。
中でも抜群の写りをするのがXF90mmです。
絞り開放f/2から淀みのない解像度を叩き出すモンスターレンズです。
XF55-200mmを持ち歩いていてたとしても撮影目的がイメージできる時は一緒に持っていきますね。
燕岳の奇岩体から大天井岳まで伸びる稜線を狙うなら超広角レンズです。
特に雲の動きがある日はドラマチックで大胆な写真を表現できるでしょう。
星を狙うなら広角単焦点レンズです!
中でもサムヤン12mmは星景専用のレンズと言ってもいいくらいよく撮れます。
安価なレンズですが、その実力には脱帽してしまいます。
また、夜景撮影でも威力を発揮します。
昨年の燕岳で撮影した写真の記事をこちらに書いてますのでご参考ください。
以上、燕岳に対して見方が変わったよ!という記事でした。
混雑する山ではありますが、是非、混まない残雪期、初冬(晩秋)に訪れてみてはいかがでしょうか。
それでは。