永遠に尽きないズームレンズと単焦点レンズの論争。
さて、この記事にたどり着いたあなたはどちらのレンズを好んで使っていますか?
おそらく登山をやる方の多くは、換算で24〜100mm程度の標準ズームレンズ、または28m〜200mm程度の高倍率ズームレンズを好んで使っているかと思います。
その理由って、足で画角を稼げないシーンが出てくるからなんですよね。
私はと言えば、FUJFILM Xシリーズへの併用をきっかけにズームレンズから単焦点レンズでの撮影が中心になりました。
しかし、8月に行ったラダックのトレッキングではこのように感じた一面もありました。
「うーん。標準ズームレンズがあればよかったかもなぁ。」
なぜ、そのように感じたのかと言うと予測がつかない場面に遭遇したからです。
初めて行く場所は、単焦点レンズよりもズームレンズがとても役立つということを感じた出来事でもありました。
裏を返せば予測がつき焦点距離を変えたいシーンが交互に訪れなければ単焦点レンズでいいわけなんです。
そう、今回の記事は予測がつく登山でどんな場所でどんなレンズを使っているのか?というお話です。
その舞台が典型的な日本アルプスです。
もくじ
日本アルプスの登山は樹林帯歩きがつきまとう
日本アルプス(北アルプス/中央アルプス/南アルプス)に限らず、日本の登山の特徴は樹林帯歩きからスタートすることでしょう。
樹林帯の山腹を巻いて標高を稼ぎ、次第に尾根歩きになり、森林限界を抜けてようやく展望が開けるというのがお決まりパターンです。
日本の山歩きは必ず樹林帯歩きがつきまといます。
これが海外登山(トレッキング)との違いではないでしょうか。
海外レビューなんて見ていると、F4程度の広角ズーム、標準ズーム、望遠ズームを使えばいいなんてのを目の当たりにしますが、あながち嘘ではありません。
なぜならば、景色が開けている場所を歩くことを前提としているからです。
根本的に日本と景色の種別が異なるんです。
日本はトレッキング(縦走)をする前に、先ずは森から登山を始めるのが大前提となります。
ですから、単調な樹林帯歩きも楽しみたいなと思って単焦点レンズを使っています。
樹林帯では換算75mmの単焦点レンズが良いなと思う理由
単焦点レンズの代表格と言ったら、換算50mm程度の標準レンズでしょう。
APS-C機なら35mm、マイクロフォーサーズ機なら25mmですよね。
確かに明るくて森の中を撮影しやすい画角でもあります。
一方で、遠景撮影をするには短いかなって感じる画角でもあるんですね。
75mmって遠景撮影と足元の両方を切り取るのにちょうどいいんですよ。
例えば、こんな写真は接写ができる広角単焦点レンズでも撮影できるんです。
でも、中望遠単焦点レンズ(XF50mm F2R WR)で撮影しています。
※Xマウントだと換算76mmになります。
なぜ、換算75mmを使うのかというと、樹林帯から見える特定の山や地形を狙うにのにちょうど良い距離感だからなんです。
そして、単焦点独特の表現をやり易いんですね。
例えば、下の写真はXF50mm F2R WRで絞りをF2.8に開けて撮影しています。
解像度が高いレンズですからF2.8で撮影しても遠くの山をしっかりと描写してくれます。
それでいて、周囲の木々の枝葉ボカした表現が可能になります。
この距離感で高倍率ズームレンズを使って同じ表現をしようと思ってもできないですよね。
絞って撮影をする分には問題ないかもしれませんが、絞り開放付近で撮影をすると、周辺減光が起きたり解像度が低かったりする、という不都合な面が目立ってしまいます。
ですから、森の足元にある様子を切り取る目的の他、描写力を担保した遠景の被写体を撮影しつつも、その周囲の様子はボカしたいということを実現する為に換算75mm(FUJIFILMでは76mm)のレンズを使って撮影しています。
森林限界を抜けたら広角レンズ一択です
樹林帯を抜けたら広角レンズ一択ですね。
広角レンズはXF10-24mm F4R OIS、XF16mm F1.4R WR、SAMYANG 12mm F2.0 NCS CS の3本を使っています。
使い分けとしては、晴れならXF10-24mm、雨が降りそうならXF16mm F1.4、星景撮影をするならサムヤン12mmという選び方をしています。
(使い分けの詳細はこちらの記事をご覧ください。)
広角レンズは2mmの差(APS-C機の場合)で構図が大きく変わります。
晴れならXF10-24mmを使っていますが、換算15mmの超広角域から換算36mmの準広角域までまで画角調整ができるのは便利なんですよ。
稜線の上での行動中は広角レンズ1本あれば大抵の場合は事足りますよね。
標準ズームをお持ちの方も稜線では広角側での撮影が多いのではないでしょうか。
最後は望遠レンズの出番
ある程度、稜線を広角レンズで撮影をしたら望遠レンズの出番です。
遠くを引き寄せて撮影をすることはもちろんですが、どちらかと言うと特定の被写体を狙うのが目的です。
そのため、私は中望遠単焦点レンズXF90mmF2 R LM WR(換算137mm)を使って撮影をしています。
絞り開放F2から使えますから、背景がごちゃごちゃしていても強気に撮影できちゃいます。
ズームレンズ(特にF値が可変の)だと背景をここまでボカすは無理です。
しかし、望遠系レンズを使うと簡単にボカすことができるんです。
その結果、特定の被写体を浮かび上がらせて強調する表現が可能になるんです。
下の写真は仙丈小屋と後ろの仙丈ヶ岳を狙いました。
絞りはF2.8で撮影しています。
遠景の解像度を保ちつつも手前の葉っぱをボカした表現ができるんですね。
単焦点レンズの恩恵ですね。
望遠系レンズの圧縮効果で、何気ない登山道もドラマチックに表現ができます。
下の写真は絞りF11で撮影しています。
目の前のナナカマドに近づき、背景の甲斐駒ケ岳を軽くボカしています。
さすがにF2やF2.8で撮影をすると周囲の様子が分からなくなってしまうので絞りました。
換算137mmって使いにくそうで意外と使い道が多いんですよ。
今まで見えなかった世界が見えるようになります。
条件反射的に被写体を見つけ出すようになるんですよ。
以上、無雪期における典型的な日本アルプスでは、広角ズームレンズ/広角単焦点に中望遠単焦点レンズを2本程度を持ち歩くのが定番となっているぞ、というお話でした。
単調な樹林帯歩きに単焦点レンズも持ち込むと時間があっという間に経ちますよ〜。
単焦点レンズを持ってると稜線からの景色だけでなく、周囲にある被写体を見つける能力が身につきますよ〜。
是非、ズームレンズの他にも単焦点レンズを加えてみてはいかがでしょうか。
それでは。
登場した主なレンズ達
樹林帯で大活躍のXF50mm F2R WR。
防塵防滴構造。
稜線に出たら広角レンズで広い風景を切り取り。
換算15mmの超広角から36mmの準広角まで使える便利なXF10-24mmF4 R OIS。
雨だったり、お花の接写撮影をしたい時は、XF16mm F1.4R WRで決まり。
(終日、雨だった事例はこちらの記事をご覧ください。)
遠景撮影だけでなく、特定の被写体を狙うならXF90mmF2 R LM WR一択です。