「星景や星空の撮影は、フルサイズセンサー搭載機じゃないとダメなのか」
「本当にAPS-Cセンサー搭載機だと星空撮影で不利になるのか」
そんな方へ向けた記事になります。
(※2020年11月時点)
実際に私も「フルサイズ機じゃないと星空撮影は難しいのかも」と考えていた時期がありました。
しかし、色々と考えて考え抜いた末、APS-C機でもイケる!という確信を得ました。
カメラを使い慣れてくると、星空の撮影したくなっちゃいますよね。
例えば、山のテント場から見える星空とかね。
いいもの見たら写真に収めたくなるのが人情というものです(笑)。
さて、その肝心の星景撮影ですが、善し悪し(写り具合のクオリティという意味)は何で決まるのかというと
- センサーの受光面積
- レンズの光学能力
- 画像処理エンジン
です。
という条件だけ考えると、フルサイズ機のほうが有利なわけですが、レンズとカメラをきちんと選定すればAPS-C機でもイケます!
上記のことを踏まえ、APS-Cセンサーのカメラユーザーの私が考える
- 「APS-C機で星を撮るカメラとレンズのベストな組み合わせ」
をご紹介します。
もくじ
APS-Cセンサー搭載機で感じている2つの限界
以前までペンタックス K-3をメイン機材として使用しておりました。
しかし、高感度で撮影するようなシーン、特に星景写真を撮るときに撮影できる能力に限界を感じてました。
星を点像撮影できるシャッター速度で撮影するにはレンズの明るさが足りない
星を赤道儀のような機材で追尾してもいいのですが、その方法だと風景が流れてしまいます。
下の写真は、ペンタックスのアストロレーサーで星を追尾撮影をしました。
天の川はまぁまぁ撮影できている。
でも、地平線に写るシルエットがボヤ〜って見えちゃうんですよね。
理由は星を追尾すると景色が流れちゃうから。
星と景色を別々に撮影して合成すればいいという考え方もありますが、その方法だと一手間増えてしまいます。
しかし、一発撮りで撮影から写真の絵まで完結したい人もいるでしょう。
(当記事ではなるべく現場で解決することを目指しています)
ISO感度を高くするとノイズが入る
ISO3200まで上げるとザラついた画像になってしまいます。
カメラのディスプレイでも判別できちゃいますね。
下の写真はSIGMAの超広角ズームレンズ 10-20mm F4-5.6 EX DC で
- f/4
- ISO3200
- 25秒のシャッター速度
で撮影したものですがノイズが酷い…。
更にRAW撮影データをLightroomで現像し露出をプラス3.5上げています。
ノイズリダクションはかけていません。
フルサイズ機ならISO3200の撮影でも楽勝でしょう。
もう一つ作例を。
- f/4
- ISO6400
- シャッター速度を13秒
で撮影したものをLightroomでプラス露出で補正をかけたものです。
ノイズを除去する補正はかけていません。
やはりノイズが目立ちますね。
星を点像としてシャープに写すめには、
- 明るいレンズで絞り開放でもシャープに写ること
- ISO感度を上げてもノイズが入らないカメラ
が必要になってきます。
現場で無理ならソフト(Lightroomがオススメ)で補正するという手段もあります。
ですが、今回はカメラ機材を軸として考察していきますね。
星景撮影はこんな動画のような絵が理想です。
この動画ではフルサイズセンサーを搭載機
- NikonD750
- NikkonD610
- NIKKOR 14-24mm f/2.8
- SIGMA35mm F1.4
が使われていますね。
編集をしているでしょうがとてもクリアな映像ですよね。
私が限界を感じていたのは、APS-C機における高感度耐性、広角レンズの選択肢でした。
どう転んでもAPS-C機では、NIKKORブランドやSIGMAが出しているようなスペックと同等の広角レンズはないし、センサーの高感度耐性も勝てません。
星を点像撮影する適正露出時間は500のルールを適用しよう
2020年5月現在、フルサイズ機換算で24mm以下(APS-C機だと16mm以下のレンズ)でF2.8以上の明るさがあり、かつ、絞り開放からシャープに写せるレンズの選択肢は限られています。
仮にF2.8のレンズを使用したとしても絞り開放で撮影することによる周辺光量減光を回避したりシャープさを求めると1段絞る必要がでてきます。
仮に開放がF2.8だとしたら実質の絞り値はF4.0になってしまいます。
新月の日であれば
- 絞りf/4
- ノイズが入らないギリギリのISO感度は1600
- シャッター速度30秒でやっと撮れる
感じですが、星景撮影を目的とするなら明るさが足りません。
バルブ撮影で
- シャッター速度を60秒まで引っ張れば
- シャッター速度30秒
- F2.8相当の明るさを得られます
が今度は星が流れてしまいます。
悩ましいですね。
星を流す撮影手法ならいいんですけどね。
星景撮影には「500のルール」があります。
星が流れない露出時間の限界値として500をレンズの焦点距離で割って算出するというものです。
露出時間=500 /レンズの焦点距離(フルサイズ相当)
この計算式をAPS-C機のレンズに当てはめると下記の表のようになります。
ここではKマウントとXマウントでまとめました。
APS-C機に力を入れているのがPENTAX(リコーイメージング)とFUJIFILM(富士フィルム)だからです。
焦点距離 | 露出時間 | 適合レンズ |
---|---|---|
8mm (換算12mm) | 41秒 | XF8-16mmF2.8 R LM WR |
9mm (換算13.5mm) | 37秒 | LAOWA 9mm F2.8 ZERO-D |
10mm (換算15mm) | 33秒 | SAMYANG 10mm f2.8 ed as ncs cs |
11mm (換算17mm) | 29秒 | DA☆ 11-18mmF2.8ED DC AW |
12mm (換算18mm) | 27秒 | SAMYANG 12mm F2.0 NCS CS ZEISS Touit 2.8/12 |
14mm (換算21mm) | 24秒 | SAMYANG 14mm F2.8 IF ED UMC DA14mm F2.8 ED XF14mm F2.8 R |
16mm (換算24mm) | 21秒 | XF16mmF1.4 R WR XF16mmF2.8 R WR XF16-55mm F2.8 R LM WR |
18mm (換算28mm) | 17秒 | XF18mm F2 R |
23mm (換算35mm) | 14秒 | XF23mmF1.4 R XF23mm F2 R WR |
「500のルール」を当てはめると、広角になるほどシャッター速度を長くしても星を点像として写せるようになります。
実際に算出した露出時間と実際に私が撮影した写真を照らし合わせてみます。
月明かりがあるときは下の写真のように
- 10mm(換算15mm)
- f/4
- シャッター速度20秒
- ISO1600
だとちょうど良い感じです。
月明かりがないときはf/4の撮影だと、シャッター速度30秒、ISO3200でも暗い感じになります。
もし、絞り開放F4の10mmの超広角レンズで星を点像として撮影するためには、33秒以内のシャッター速度にしなければなりません。
- 500 / 10mm×1.5(フルサイズ換算)≒ 33秒
ですが、前述した通り30秒程度でシャッター速度(露光時間)では明るさが足りません。
仮にISO感度を6400まで上げたとすれば適正露出を得られますが、APS-C機特有のノイズ問題に直面します。
そこで明るいレンズが必要になります。
- F2.8のレンズなら30秒のシャッター速度でも絞りf/4で60秒の露光時間で撮影した相当の露出
を得ることができます。
例えば、F2.8の14mmのレンズ(フルサイズ機で21mm相当)の場合、星が点像として写る最大露出時間は24秒となり、適正露出を得られます。
- 500 / 14mm×1.5(フルサイズ換算)≒ 24秒
この条件でF4.0に換算にすると、48秒の露光時間に相当した露出を得られることになります。
ということで、適正露出の基準はこうなります。
(1)絞り開放がF2.8
(2)ISO3200
(3)25〜30秒のシャッター速度
選択すべきレンズは14mm(換算21mm)より広角でF2.8より明るいこと
自ずと選択すべきレンズが見えてきますね。
天の川と風景を収めることを考慮すると14mm(フルサイズ換算で21mm)以下の広角レンズがベストです。
ペンタックスの機材で星空撮影なら
ペンタックスの機材なら
が価格の面からも手を出しやすいレンズですね。
防塵防滴仕様で天体撮影を全面的に押し出しているレンズとしては、2019年2月に発売されたスターレンズ「HD PENTAX-DA☆11-18mmF2.8ED DC AW」があります。
が、如何せん価格が高いです。
本当に星景撮影するためにそこまで必要か?と問われるとなくても対応できるよね、と私は思っています。
FUJIFILMの機材で星空撮影なら
FUJIFILMなら XF14mmF2.8 または SAMYANG12mm F2です。
「純正を選択しようぜ!」と言いたいところですが、より広角側であること、明るいこと、そして海外のレビューでも評判の高い SAMYANGの単焦点広角レンズ 12mm F2.0 が第一候補になります(後述します)。
FUJIFILMにはAPS-C機用としてはダントツの明るさを誇る XF16mmF1.4 R WR(つまりフルサイズ機換算で24mm)がありますが、ちょっと広さが足りない感じがします。
ISO感度で明るさを得ながらノイズを低減するならどのカメラになるのか
数年前のAPS-C機なら1600万画素一択ですね。
理由は2400万画素よりも画素ピッチが広くなるので、ISO感度を高くしてもノイズが少ないからです。
APS-Cセンサーに2400万画素を詰め込むと画素ピッチは3.9μmになります。
一方で3600万画素のフルサイズセンサーだと画素ピッチは4.8μmとなります。この画素ピッチは1600万画素のAPS-Cセンサーと同じです。
つまり画素ピッチに関して言えばこういうことです。
1600万画素のAPS-C機 = 3600万画素のフルサイズ機 = 同じ面積辺りの受光量は同じ。
よって、1600万画素のASP-C機なら高画素機のフルサイズ機と同等のISO感度に耐えられると言えます。
1600万画素のカメラはこんなのがありましたね。
- PENTAX:K-5・K-5II系
- FUJIFLIM:X-T1
以上のことを踏まえてカメラを選択するとすればX-T1、K-5系がベストな選択になります。
しかし世代が古い感も否めません。
カメラって星景撮影以外の用途でも使うので世代を刷新していくことになるでしょう。
FUJIFILM XシリーズのX-H1、X-T2、X-Pro2、X-T20、X-E3も星空撮影用のカメラとして候補に入る
となると、X-H1、X-T2、X-Pro2、X-T20、X-E3も選択肢に入ってきます。
実はこの4機種は同じセンサー(X-Trans CMOS III)、同じ画像処理エンジン(X-Processor Pro)を搭載しています。
画素数が2400万画素に上がり画素ピッチが狭くなっていますが、全然、問題なしです。
PENTAX K-3と併用してFUJIFILM X-T2も同時に運用を開始しました。
FUJIFILMのX-T2の高感度耐性には目を見張るものがあります。
感覚としてはK-3のISO感度1600がX-T2では6400です。
これを知ってしまうと、高感度耐性だけを目的としたフルサイズ機なんて要らないんじゃないのか、と感じております。
まとめると、2020年5月時点におけるAPS-C機で星を点像として撮影するのら
- X-Trans CMOS IIIを搭載したFUJIFILMのカメラ
- SAMYANGの単焦点広角レンズ 12mm F2.0
の組み合わせが一番ベストかなって思います。
サムヤン12mm F2.0 NCS CSなら星を点像として撮影できる最大露光時間が27秒(500のルール / 換算18mm ≒ 27秒)です。
これは何を意味するのか?
露光時間を短くでき、星をより点像として撮影しやすくなるということです。
なぜならば、絞り開放f/2からサジタルコマフレア(コマ収差)がほぼ見られない写真を撮影できるからです。
つまり、ISO3200であれば露光時間が15秒もあれば適正露出を得られます。
最大露光時間27秒に対して15秒の露光時間で済んでしまいますね。
最新機種のカメラとしては第4世代のセンサー「X-Trans™ CMOS 4」を搭載したX-T4、X-T3、X-Pro3がありますが高感度耐性はX-T2の方が上です。
最高感度ではX-T3の画像をX-T2と同じサイズに縮小した場合でさえX-T3の方がノイズは多い。
引用:デジカメinfo:富士フイルムX-T3は低感度の画質は改善されているが高感度ノイズは増えている
2020年3月、X-T2に加えX-T3を導入し天の川⤴︎を撮影してみました。
結果は悪くありませんでしたが、X-T2と比較してアドバンテージを感じなかったのも事実です。
このことからもX-T2で全然イケるということを実感しましたね。
撮影したときの様子は、嬬恋で天の川を撮影してきました(FUJIFLM X-T3)に書いています。
FUJIFILM Xマウント機の広角レンズに対する考え(2020年11月時点)
気になるレンズが2つ挙げられますね。
1つは「XF8-16mmF2.8 R LM WR」。
サムヤン 12mmより1段暗くなりますが、広角側が広くなったことにより、露光時間を長くしても星を点像撮影することが可能になると考えております。
500のルールを適用すると最大で40秒まで露光できます。
その場合 、画面周辺部のサジタルコマフレ(コマ収差)の低減を考えると絞りを1段絞ったf/4での撮影になり、ISO感度も4000程度まで上げる必要があるでしょう。
これまた価格が高めに設定されていますね。
前述した通り実際のところ12mm(換算18mm)より広角が必須でなければ星景撮影用のレンズはサムヤン12mm F2.0 NCS CSでいいと思います。
価格もリーズナブルだし!
サムヤン12mm F2.0 NCS CSは絞り開放f/2から使えますので露光時間も短くできます。
実際にいい結果を得られていますよ。
FUJIFILM X-T2とサムヤン12mmで撮影した作例
最後に作例です。
どんどん次世代のセンサー搭載機が登場していますが、星景撮影に関していえば、現行世代のセンサー搭載機である必要はありません!
コンパクトなシステムと画質の両方を取りたい方は検討してみてはいかがでしょうか。
それでは。