XF16-55mmとXF16-80mmをどうやって使い分けるのか?
どちらも長所と短所があり、それぞれに適した使用シーンがあります。
今回は、
- XF16-55mmとXF16-80mmの画質比較(特にワイド端)
- それぞれのレンズで適したシーン
- 使い分け
について書きます。
もくじ
とりあえずスペック
重量の「※」はフード、前玉キャップ、プロテクター装着時に測定した実重量になります。
スペック上だけの情報だけでなく、実用場面、つまりボディにレンズ装着した時の本当の質量を把握しとくべきだという考えから記載してます。
XF16-55mm F2.8 R LM WR | XF16-80mm F4 R OIS WR | |
---|---|---|
開放絞り | f/2.8 | f/4 |
最小絞り | f/22 | f/22 |
レンズ構成 | 12群17枚 (非球面レンズ3枚、EDレンズ3枚) | 12群16枚 (非球面レンズ3枚、EDレンズ1枚) |
絞り羽根枚数 | 9枚 | 9枚 |
フォーカス | リニアモーター | ステッピングモーター |
最短撮影距離 | 30cm | 35cm |
最大撮影倍率 | 0.16倍 | 0.25倍 |
サイズ | ø83.3mm × 106mm(W端) ø83.3mm x 129.5mm(T端) | φ78.3mm x 88.9mm (ワイド端) φ78.3mm x 131.5mm (テレ端) |
重量 | 655g ※740g(Zeta Quint使用) | 440g ※512g(EXUS使用) |
フィルターサイズ | 77mm | 72mm |
防塵防滴 | 対応 | 対応 |
手ブレ補正機構 | なし | 対応(6.0段) |
XF16-55mm vs XF16-80mmの大きな違い
最大の違いは焦点距離ですね。
XF16-55mmは24-84mm相当、XF16-80mmは24-120mm相当をカバーしています。
XF16-55mmは、フルサイズ機で言う24-70mm/F2.8のレンズの立ち位置です。
つまり、フラグシップズーム(レッドバッジを冠している)です。
FUJIFILMの開発者もこう言っています。
赤バッジを作る時って妥協が許されないんです
XF16-80mmは、24-105mm/F4や、24-120mm/F4に相当するレンズです。
利便性、可搬性、画質のバランスを取ったレンズだと言えます。
サイズと重量
XF16-80mmの方がXF16-55mmよりも一回りコンパクトです。
太さで5mm、長さで1.7cmの差があります。
フード、レンズキャップ(後玉は除く)、保護フィルターを装着した状態で比較した場合、XF16-80mmはXF16-55mmの70%程度の重量しかありません。
ですが、テレ端まで伸ばした時は明らかにXF16-80mmの方が長いですね。
XF16-55mmは23.5mm伸びるのに対し、XF16-80mmが42.6mm伸びます。
手振れ補正機構
XF16-55mmには手ブレ補正機構がありません。
一方でXF16-80mmmには6段の手振れ補正機構があります。
X-T3とXF16-55mmの望遠端55mmでカジュアルに手持ち撮影した場合、1/125秒が手振れしないのシャッタースピードだとすれば、XF16-80mmでは1/4秒でシャッターを切れることになります。
しかし、これはあくまでも謳っているスペック上での話であって実用場面では「カジュアルに」ボディを構えて使うなら3段程度の差かなと感じます。
実際には1/15秒がくらいでシャッターを切れればブレないかな。
光学性能
最初に結論を書いておくと、ワイド端の16mm側では周辺画質がXF16-55mmの方がすべての絞り値においてXF16-80mmよりも優れています。
23mm以降についてはf/5.6以降ならばどちらも大差がない印象かなぁ。
あくまでも解像度に着目した話ですけど。
今回はワイド端の解像度を比較した写真を掲載します。
撮影のやり方
- XF16-55mmもXF16-80mmも手持ち撮影
- XF16-80mmはOISを”ON”
- 電子シャッターを使用
- シャッタースピードはf/11で1/250秒を確保
- X-T2にはXF16-55mmを、X-T3ではXF16-80mmの組み合わせで撮影
理由
- 単焦点と匹敵する解像度という謳い文句のXF16-55mmを解像度の点で敢えて不利な立場に置きたかった(X-T2:2400万画素 VS X-T3:2600万画素)
- 通常、三脚を使うよりも手持ち撮影することが多い
- 通常、XF16-80mmを使う人はOISを”ON”にして使う
- XF16-55mmを使う人が手振れ補正機構が実装されたボディ(X-H1、X-T4、X-S10)を使うとは限らない
もちろん純粋な比較であればどちらのレンズも同じボディにつけて、三脚に乗せ、XF16-8mmのOISをOFFにして比較するのが真っ当なやり方です。
ですが、実用場面でのパフォーマンスを発揮できているのかどうかを知りたいですよね。
私は知りたいです。
比較元となる画像です。
ピントは黄色枠で合わせました。
赤枠の部分をトリミングしたものを比較します。
ワイド端16mmの解像度はXF16-55mmが優位
左上にある枯れた草と、中央部よりやや右下にある500円玉くらいの大きさのクレーター状の形が表面にある石に着目してみてください。
違いが分かると思います。
XF16-80mmのほうは少しモヤっとした感じがあります。
一方でXF16-55mmはクリア感があります。
ただ、このくらいの解像度なら等倍鑑賞でもしなければXF16-80mmも実用範囲内ですね。
とは言え…
何よりも注目して欲しいのが、XF16-55mmでは2400万画素のX-T2を使用していることです。
XF16-80mmで使用したX-T3よりも200万画素少ないですが、解像感で優位に立っているんですよね。
たったの200万画素の差ですが、それでもレンズの能力差がカメラの有効画素数を越えて結果として出てくるんだなぁと感心しましたね。
23mm~55mmの解像度は絞れば同等?
23mmから55mmに関してはf/5.6からf/11で撮影するなら、XF16-55mmもXF16-80mmも大差ないかなぁという感じです。
ただ「本当かなぁ?」という気持ちもあるので改めて検証するつもりです。
(いい条件で検証するタイミングが難しい….)
今回は実際に自分が2つのレンズで撮影して比較した感想ですが、実は以前にも他の人物が撮影したRAWデータを入手し、現像したうえで比較をしたことがあります。
詳しくは下の記事を読んでいただきたいのですが、簡単に言うと16mm以外の焦点距離であれば大差がないと感じた話に触れてます。
参考記事:単焦点が好みだけど2年ぶりに5倍標準ズームを手にしました:XF16-80mmF4 R OIS WR
ボケの雰囲気
望遠端におけるボケの量なら…
XF16-55mmが
55mm ÷ f2.8 = 19.64
XF16-80mmが
80mm ÷ f4 = 20
とほぼ同じです。
ぶっちゃけ、どっちもテレ端の絞り開放で撮影するなら大差ないんじゃね?
って思うんですよね。
ボケた時の雰囲気も大差ないですし。
ただ、50mm付近でボケを利用した撮影をするなら話は別ですね。
XF16-55mmの方がf値が明るい分、ボカすことができます。
3〜4mの距離感から55mmで撮影した時のボケ具合です。
XF90mmF2で撮影した時のような思わず唸ってしまうボケには程遠いですが、いい感じに背景の状況も伝えつつロバ(?)が引き立っていますよね。
耐逆光性能はXF16-55mmが圧倒的に高い
「このレンズで逆光撮るのキツいなぁ」
と強く感じた瞬間がXF16-80mmで撮影したこの写真でした。
絞り込んでも光芒の先端が割れてますよね。
私はこの光芒の形に美しさがないと感じました。
耐逆光性能にはXF16-55mmが圧勝です。
ナノGIコーティングのお陰ですね。
ゴーストも出てますが光芒の形に美しさがあります。
XF16-55mmは強い光源の影響を受ける環境下でも安定した絵を吐き出してくれるレンズだと思います。
このレンズを手にした理由が『逆光に強いズームレンズが必要だった』ですからね。
XF16-55mmは「手振れ補正なし」のボディとの組み合わせなら1/125秒稼げればOK
1/焦点距離で手振れが起きないと言われています。
55mmなら1/60秒でシャッターを切れればOKということになりますね。
しかし、実際には意識的に手振れが起こらないようにシャッターを切る必要があります。
カジュアルに気兼ねなく撮影するという意味では、55mm側で1/125秒、16mm側なら1/60秒でシャッターを切れれば手振れの心配はないかなと考えています。
1/125のシャッタースピードとはどんな状況で使うのか?
この写真は、絞りf/5.6、ISO感度400、シャッタースピード1/280秒で撮影しました。
光のコンディションは「曇り空で影は見えない」になります。
ISO200、または、1段絞ったf/8で撮影していたとしたらシャッタースピードは1/140秒で同じ露出を得られるということになりますね。
つまり、曇り空で風景の撮影をする時のシャッタースピードが1/125秒のシャッタースピードだと考えればいいです。
(絞り込んでf/16で撮影したとしてもISO感度を800にすれば済みます)
さて、ここで光量に対してシビアな状況での撮影を考えてみます。
曇り空の樹林帯なら?
これは絞りf/4、ISO感度400、シャッタースピード1/200秒で撮影しました。
仮にf/5.6で同じISO感度ならシャッタースピードは1/100秒(または1/125秒でもOK)になります。
つまり曇っていて影が発生しない条件下(これは明るめの森ですが)でも、とりあえずブレないであろう1/125秒のシャッタースピードを稼げます。
このレンズ、f/2.8から周辺部まで解像するということが単焦点レンズとの比較でも分かっていますので、特にパンフォーカスで撮影をする目的がなければ、樹林帯でも安心して絞り開放で撮影ができます。
しかし、一番最強なのはボディ内手振れ補正機構があるX-H1やX-T4と組み合わせて使うことなんですけどね。
16mm側の周辺画質に対してシビアにならなくていいケース(XF16-80mmを使う)
XF16-80mmはワイド端である16mmの周辺画質が、どの絞り値においてもXF16-55mmの足元にも及びません。
しかし、実用範囲内の解像度ではあります。
それでも気になるならXF16-55mmを使うか、XF10-24mmまたはXF16mmF1.4を使って撮影すると幸せになれます。
逆光にも強いですし。
しかし、使うシーンによっては周辺画質や逆光に対してシビアにならなくてもいいケースがあります。
それはどんなシーンなのか?
一言で表現すると、画像の周辺部に視線が向かない写真になります。
実例をご紹介します。
すべてXF16-80mmで撮影したJPEG撮って出しになります。
ピーカンじゃない雪山
この写真を見て画像周辺部に目が行きますか?(しかもブログ掲載用に解像度落としてる)
先ず山全体に目が行きますよね。
十分に厳冬期の様子が伝わりますよね。
画質も悪いとは思わないですし。
XF16-80mmは逆光にはあまり強くないレンズですが、曇り空なら逆光に多少弱くても構いません。
ガス沸き立つ風景
先ず写真を見たらどこに目が行きますか?
歩いている人物とその向こうに続く稜線上の登山道、そしてうっすらとガスが沸き立つ向こうの山に視線が移動していくはずです。
画像の周辺部から見る人はいないでしょう?
上の写真は朝の時間帯に縦走をしている時に撮りました。
小雨が上がった直後の写真ですからガスガスですね。
シャッタースピードは1/38秒でした。
荷物も20kg程度背負って歩いている中、一瞬だけ立ち止まって撮影してますからラフな姿勢でシャッターを切っています。
XF16-80mmには手振れ補正もありますからX-T2やX-T3、X-Pro系のカメラとの組み合わせでも光量を稼げない時間帯にシャッター速度に対してシビアになる必要がありません。
(感覚的に80mm側で1/15秒まで適当に撮影してもブレない印象です)
光のスポットライトが特定の場所に当たる時
写真をパッと見た時、光が強いところに視線が向きます。
この写真では秋の気配を感じる青空と光が当たっている岩場に目が行きますよね。
いきなり画像下のハイマツの解像度なんか吟味しないですよね。
カーブの流れがある風景
この写真では川の流れに視線が行きます。
上流から下流に流れる水、写真の中央からやや左にある岩という具合に。
いきなり右下にある木の葉は見ないですよね。
要するに主題が画面の真ん中にある、かつ、その主題にスポットライトのように強調されている(光が当たっている、明度が高いetc)ようなケースでは画像周辺部の画質に神経をとらがらせる必要がないということです。
ピーカンよりも曇り気味の天候の方がそんなケースが多いような気がします。
この場合、X-T3などのボディ内手振れ補正がないカメラと組み合わせて使う場合、手振れ補正機構が使えるXF16-80mmを選択した方がラフに撮影できるというメリットもあります。
16mm側の周辺画質・逆光でシビアになりたいシーン(XF16-55mmを使う)
足元から遠くまで伸びる遠景撮影をパンフォーカス撮影をしたい時は周辺画質までビシッっと写したいですね。
絞ってもエッジの像が流れてしまうと何か残念な気分になってしまいます。
また、折角のダイナミックの風景も点光源(逆光や斜光)に弱ければ台無しになってしまいます。
具体的にどんなシーンか?
被写体が足元から遠くまで続く景色
これは夏の御嶽山でXF16mmF1.4 R WRを使って撮影した風景です。
目の前のハイマツから遠くの山までビシッと決まってますね(ブログ用に解像度落としています)。
XF16-55mmも絞れば解像度はXF16mmF1.4と同じです。
太陽光を入れた風景
快晴の日に太陽光を入れた撮影をするならXF16-55mmを持ち出して撮影したいですね。
なぜならば逆光に強いからです。
(これはXF16-55mmと同じくナノGIコートがされているXF16mmF1.4で撮影)
下の写真は日本海に太陽が沈む写真をXF16mmF1.4で撮影したものですが、もう少し引き寄せたいなと感じた風景の一つです。
この時は逆光に強いレンズはXF16mmF1.4だけしか持ってなかったので単焦点レンズで勝負しました。
こんな時にナノGIコートが実装されているXF16-55mmを使えば逆光耐性を維持しつつも風景を引きせられますよね。
太陽光がドラマチックの景色を醸し出すシーン
下の写真はXF16-80mmで撮影した富山湾へ沈む夕日です。
ガスガスだった空模様から一転しドラマチックな風景が広がったシーンです。
急いで撮影をしましたが、逆光に対する弱さが露呈し残念な結果に。
太陽光がドラマチックの景色を醸し出すシーンではXF16-55mm一択です。
XF16-55mmとXF16-80mmの使い分け
最後にXF16-55mmとXF16-80mmの使い分け方を考えてみます。
旅行での撮影の場合
- 国内旅行(帰省、温泉、観光)ならXF16-80mm
- 海外旅行ならXF16-80mm
- 風景が目的の旅行ならXF16-55mm
- 人と一緒に行動(レンズ交換する時間がない)していて人物を撮影する可能性があるならXF16-55mm
2019年にラダック旅行へ行った時は、XF10-24mm、XF16mmF1.4、XF50mmF2の3本を持って行きました。
この時はトレッキングをしたのですが、遠くに見える6000m級の山々や、ブルーシープというヤギの群れを見た時「せめて標準ズームがあればなぁ」と思いましたね。
今なら単焦点レンズを1本減らしてXF16-80mmを持って行きます。
便利ズームは時として強力な武器になるんですよね。
特に何の被写体を撮影するか予測がつかない初めて訪れる旅行地で威力を発揮するとつくづく思います。
登山の場合
こんなシーンならXF16-80mmを使いたいですね。
- 曇り気味(ガスが湧く感じ)の天候が予測される
- 日帰りの行動時間が長めの山行でレンズ交換なしで歩きたい時
- 樹林帯が多く低標高の山がメイン(手ぶれ補正が使える)
- 残雪期の標高1500mくらいまでの登山(山肌をズームして撮影しやすい)
2022年3月に行った筑波山(薬王院コース)ではXF16-80mmを使って撮影しました。
薄暗い時間帯からのスタートだったので手ブレ補正を使いたかったこと、太陽を入れた景色よりも122mm相当のズームで引き寄せることができる利点を取りました。
以下、その時に撮影をした写真です。
逆に5倍までのズーム比は要らないけど、逆光耐性が必要でかつ、ちょっとはズームの利便性が欲しいなという時はXF16-55mmを使いたいですね。
- 快晴で稜線の上に出る山ならXF16-55mm(厳冬期も含む)
- 数日越しの稜線の縦走がメインならXF16-55mm(望遠側はそれほど必要ないため55mmで十分)
- 妻がXF16-80mmを使う時はXF16-55mmを使う
例えば2022年2月に行った銀杏峰ではXF16-55mmで撮影しました。
快晴が予測されたこと、森林限界が低く展望が開けた地形を歩くのがメインなので逆光での撮影をするだろうと考えたこと、周囲の地形からズームのテレ端も換算84mm相当まで届けば十分だろうと判断しました。
以下、その時に撮影した写真です。
また、レンズ交換もしたくない、でもズームの利便性は少し欲しい、管理の都合上、他のレンズを持ち歩きたくないという時にもXF16-55mm1本あれば完結できるということが初冬の燕岳登山で気付きました。
- つまり、レンズ1本で風景と星空撮影も完結させたい時(例えば燕岳の星景撮影で役立ちました)
2つ同時に使うことも想定
あまりこういうシーンは多くないのですが、
X-T2 + XF16-55mmmでスチル撮影。
X-T3 + XF16-80mmで動画撮影。
2021/12/12 追記:
先日、登山に行った際に上記の組み合わせで使ってみました。
X-T2とXF16-55mmで写真撮影、X-T3にはXF16-80mmにND32を付けて動画撮影をしてみました。
ゆるふわ系の登山(に限らず旅行などにも)ならイケると感じました。
以上となります。
それでは。
高画質で逆光に強いフラグシップ標準ズームレンズ。
便利な光学式手ブレ補正が装備され美味しい画角をカバーしているいいとこ取りの標準ズームレンズ。