テント泊装備になると登りが遅くなる。
当たり前の話ですが荷物が重くなるとコースタイムより遅くなりますよね。
しかし、重装備でもコースタイム内で歩きたいと思うもの。
(とは言っても山域によってはコースタイムが明らかに緩いだのキツいなんてのもありますが)
ランニングをトレーニングに取り入れていても荷物を背負うとどうも登りが…。
なんて悩んでいる方もいるのではないかと思います。
私はランニングをする習慣がありません。
単純に好みの運動じゃないからです(他のワークアアウトで心肺機能に刺激入ってますし)。
走る習慣がない私ですが登山の登りに関しては自他共に強いと認めています。
20kg以上の荷物(初冬のテント泊装備)でもコースタイムの85%程度の時間で登ってます(暑い季節は無理)。
もちろん休憩込みです。
全然急いで登っておらず写真を撮りながらマイペースで歩いた条件での話です。
こんなことを言われることが多いです。
- 凄い荷物ですね(ダウン素材系の荷物が多く膨れて見えているだけなんですけどね)
- ペースが落ちないですね。凄まじい体力です(これは登りの終盤で多くの人がバテるポイントで言われました)
- お兄さん早いですね(自分よりピチピチの若者に言われました)
60歳を過ぎていてもビールケースごと担いでサラッと登ってしまう強者もいるくらいですからね。
それ考えたら….
一口に登山の登りと言っても色々とあります。
必ずしもすべての登りにおいて同じアプローチ方法というわけでもなく重要度が高い体の機能の発揮の仕方があります。
- アイゼンワークを伴った日帰り登山(腸腰筋が肝)
- ウルトラライト装備での登り(筋持久力と心肺機能が肝)
- テント泊装備での登り(踏ん張り力と脊柱起立筋の筋力が肝)
今回の記事はこの中のテント泊装備(ウルトラライトは追求しない)になります。
もくじ
単純に脚・ヒップ・脊柱起立筋を鍛えましょうという話です
テント装備を詰めた荷物を背負いながら登るのに重要なのは筋肉です。
身も蓋もない話ですが事実です。
登山で登りを強くしようと思ってランニングをしても心肺機能にしか効果が波及しません。
登山を何年もやってきた方なら心肺機能の能力は高くなっているはずです。
寧ろ他の要素が原因で登りが強くなれないと考えましょう。
それは
- 段差の登りで踏ん張るヒップの筋力
- 段差を登り切る脚力
- 荷物を支え続ける脊柱起立筋の強さと持続力
です。
登山とは言っても、必ずしも脚やヒップの筋力に依存する地形だけを歩くわけではありません(詳しくはこちらの記事参照)。
緩い斜度で徐々に標高を上げていく地形ではヒップの筋肉よりもハムストリングスを使います。
岩場の鎖場があるような場所では握力や引き付ける力が伴います。
急登で段差がある地形では脚力の他、ヒップの筋肉を使います。
この中で最も時間的な差がつくのは段差が連続するような急登です。
特に荷物を背負っている条件では先に挙げた脚力・脊柱起立筋の強さの差が歴然と現れます。
ブルガリアンスクワットをやると登りの踏み出し推進力が強くなります
ブルガリアンスクワットは片方の足を椅子や台に乗せてやるスクワットです。
通常のスクワットとの違いは実用動作に近いという点です。
(ついでに書いておくとブルガリアンスクワットでは心肺機能も使います)
登山でスクワット動作(つまり両方の脚を同時に使う)をするシーンはザックを背負う瞬間です。
休憩後、レイヤリングの調整やアイゼンの脱着時に多いですよね。
しかし登山の行程を考えたらスクワット動作をするシーンは数える程度しかありません。
スクワット動作よりもブルガリアンスクワットに力を入れた方が全体のパフォーマンスに影響を与えます。
写真では片方32kgのダンベル(合計64kg)を持ってやってます。
しかし登山のテント泊装備を想定する場合、片方8~12kg(合計16〜24kg)でやればOK。
きちんと理由があるんですよ。
テント泊装備の場合、15〜20kg程度になることが多いですよね、一般的には。
撮影山行なんか考えたら3〜5kgの重量が上乗せされます。
登山道で片方の脚力だけで登るシーンがあります。
つまり、自重+ザックを背負った時の総重量を片方の脚力だけで登るシーンが一瞬でもあるということです。
それはどんな場所なのか?
段差が大きい地形です。
具体的には
- 岩場
- 木の根がある急登
が該当します。
例えば、木の根が張っている段差を登る時、片方の足を段差の上に乗せたら後方の足で地面を蹴るようにして動作します。
この際、後方の足で地面を蹴った推進力で体が上方向に進行しますが、段差の上に乗せた側の足は脚力を使わないと登れないですよね。
この時にこの脚力が弱いと登りきれず再び蹴った側の足から地面に着地することになります。
結果、手を使って登る羽目になります。
登山ではこんな動作を無数に繰り返しています。
1回の動作にしてみれば大したことないように思いますが、チリも積もれば山となります。
結果的に登れるスピードに差が出てきます。
段差が大きいほど地面を蹴る側の脚力の恩恵を受けにくくなります。
勢いよく地面を蹴ったところで体が上方向へ持ち上がるだけの推進力の勢いが持続しないからです。
上に乗せた側の足の脚力(及びヒップの筋肉)が強ければ、荷物を背負っていたとしても踏ん張りが効きググッと地面を押し出すようにして登ることができます。
この動作で使う筋肉を養うのがブルガリアンスクワットなのです。
つまり、片方の足で全重量の一部を補助しつつもメインの筋力を膝を曲げる側の脚で発揮する動作を擬似的に再現できるのがブルガリアンスクワットなんです。
先ほどテント泊装備を想定するなら負荷は片方8〜12kg(合計16〜24kg)で十分と書きましたね。
この重量はテント泊をする時に背負うザックの重量と同じ程度だからなんです。
潰れるまでやる必要はなく限界よりも3〜4割の余力を残してセットを組めばいいと思います。
え、だって、実際にレジャー目的で行っている登山で「脚力がもうダメです」なんてことはないですもんね。
疲労感は感じるけど余力を残しつつ歩くのが普通ですから。
具体的な回数?
自重だけでもきちんとした動作でやれば50回もやれば「きつーい!」ってなります。
初めてやる方ならヒップを中心にありえなほどの筋肉痛に襲われると断言します。
先ずは自重で10回3セットからスタートし30回くらいできるようになったらダンベルを持って10回や15回をやればいいのかなって思います。
私は24〜32kgでセットを組むことが比較的多いのですが8〜12回でやることが多いです。
しかし、これはあくまでも筋出力の余力を得ることが目的なので、筋持久力を養うことを目的に自重だけのブルガリアンスクワットも採用しています。
登山は単発的な筋力の発揮だけでは成立しません。
筋肉の持久力も必要です。
なお、ダンベルは可変式があると便利です。
部屋の占有面積も確保できますしワンタッチで重量が変えられます。
登山とは方向性が異なりますがこちらの記事で触れています。
脚力を支えるのが脊柱起立筋です
脚力(ヒップも含む)が強くても肝心な体幹部が弱いと長時間、荷物を背負って歩いていると体が直立姿勢を保持できずバテてきます。
荷物を背負って姿勢を保持する筋力は脚力とは別のアプローチが必要です。
(もっとも高頻度で荷物を背負って山に行く人には関係のない話ですが)
荷物を支えるには体幹部の中でも背骨付近の脊柱起立筋が必要です。
脊柱起立筋は体の中でも最も大きな筋力を発揮できる筋肉です。
例えば、日常生活ではこんなシーンで脊柱起立筋のお世話になっています。
- 段ボールに入った荷物を両手で持って歩く
- 机を持ち上げて保持する
- 床に置いた荷物を台の上に持ち上げる
これらには脚の動作も伴っていますよね。
脚と脊柱起立筋は個別の機能ではなく連動した機能とした捉えましょう。
2つで一つの機能です。
逆もまた然り。
脚の機能は脊柱起立筋が機能して活きるんですよ。
脊柱起立筋の筋力維持・向上に対するアプローチ
例えば、毎週、テント泊装備で登山に出かけるような人は、脊柱起立筋を特別に鍛えなくても荷物を背負って歩いているだけで使ってますので特別に鍛える必要がありません。
(私はこれとは別の目的で鍛えています)
しかし、現実的には毎週テント装備で登れるのは季節を選びますし、コロナ禍になってから予約制が導入されたこともあり難しくなりました。
なので、日帰り装備の荷物で登山をやることも少なくないですよね。
ブランクがあると重い荷物を背負った時の耐性が弱くなります。
いかに筋肉への刺激を抜かりなく定期的に入れておくかが肝になります。
そう言った観点からも脊柱起立筋を鍛えておくといいですね。
鍛えるアプローチ方法は3つあります。
- デッドリフトをやる
- ケトルベル(またはダンベルでもOK)でスイング運動をやる
- ブリッジ運動をやる
あくまでも脊柱起立筋を鍛えるということが目的であればどれを選んでもOKです。
実用性に着目するならケトルベルでスイング運動ですね。
なぜならば、怪我のリスクが低く、部屋の占有面積を取らずに、脊柱起立筋、ハムストリングス、ヒップを同時に鍛え上げ、かつ、心肺機能への刺激も期待できるからです。
詳しくはこちらの記事をご覧ください。
道具に依存するのが嫌な方はブリッジ運動(こちらの記事で触れてます)ですね。
ただ、手首や肩周りの柔軟性がないとできないので先ずは柔軟性を身につけるのが先決ですね。
さて、来シーズンのテント泊の縦走に備えて、ブルガリアンスクワットとスイング運動をやりますか!
それでは。