(当記事は2019年4月11日に公開したものを加筆修正したものです)。
なかなか山に行けなくて体力が落ちる一方だ…なんて悩んでいませんか?
実は山に行かずして登山の体力を維持・向上できるんですよ。
最初に言ってしまうとワークアウトをやっておけよという話です。
実際に私自身が体感していることですから。
2018-2019の厳冬期シーズンは積雪量も少なかったこともあり、例年よりも本腰で山に行く頻度が減っています。
昨年の11月から今年の3月(2019年)までの5ヶ月間で5時間以上の山行をやったのはたったの3回だけです。(悲)
(※2019-2020シーズンは1/3時点で既に3回行ってます!)
完全なブランク期間があるというわけでもないのですが、今冬のようなシーズンは気乗りがしないのも手伝って2、3時間程度のハイキングで済ますことも少なくありませんでした。
この程度の山行でトップシーズン並みの体力を維持できるのかというと多分無理です。
荷物も軽量ですし歩くコースも緩く負荷が掛からないからです。
という状況でしたが、先日の登山(大菩薩嶺の6時間以上の山行)で体力的に全然余裕があることを確認できました。
今すぐにでもテント泊装備で縦走しても大丈夫な感じです。
ワークアウト習慣のおかげです。
もくじ
1:登山で使う体力を識別しておこう
一口に体力と言っても幾つかの種別に区別されます。
体力には行動体力、防衛体力がありますが今回は行動体力にクローズアップしますね。
行動体力を大きく分けると以下の3つに大別できます。
- 心肺機能
- 筋持久力
- 筋力
その中でも一番着目されるのが心肺機能ですね。
登っている最中は心肺機能をずーっと使い続けていますから。
筋力、そして筋持久力も大事です。
使う部位を羅列するとこんな感じかな。
大腿四頭筋(太腿の前)
段差のあるような登りや下山で使われます。
特に下山ではブレーキを掛けながら力を発揮するので筋疲労が起こりやすく筋力が発揮できなくなり転倒してしまうこともあります。
緩い斜面で段差がない登山道を登るときはあまり使われません。
大臀筋(お尻)
段差のある登りでよく使われます。
特に木の枝が入り組んでいる場所で歩幅を大きく取って上げる時や、岩場の段差で大臀筋の踏ん張り力が問われます。
ここが弱いと踏ん張って一気に上がるが難しくなります。
裏を返せばそれ以外は使うシーンがないんですよね。
例えば下山や緩い斜度の登りでは使われません。
下腿三頭筋(ふくらはぎ)
岩場や木の枝が入り組んでいるような場所で爪先を支点にして体を支えているような時に使われます。
例えば、ザックを背負ったまましゃがんで爪先立ちして写真撮影をする時もふくらはぎの筋力が問われます。
下山ではあまり使うシーンはありません。
腸腰筋(脚を上げる動作に使うインナーマッスル)
登山では何千回もの脚の上げ下げ動作をしています。
脚を上げる動作では腸腰筋が使われます。
特に冬山に入る人はアルパインブーツとアイゼンを着用して歩くため脚を上げる際の筋力が問われます。
ここが弱いと心肺機能よりも先に脚が上がらなくなってしまいます。
前脛骨筋(ぜんけいこつきん):すねの筋肉
爪先を持ち上げる時に使います。
登山では足の爪先から持ち上げて歩くのが基本ですがここが疲れていると爪先を石などに引っ掛けて転倒してしまうことがあります。
ハムストリングス(太腿の後ろ)
登山では太腿の前(大腿四頭筋)が重要なんて言われていますが太腿の後ろ(ハムストリングス)も重要です。
段差がない緩い斜度が続くような登山道を登坂している時に使います。
いわゆるアクセル筋と言われていますね。
下山では使われません。
脊柱起立筋(背骨付近の筋肉)
上半身の筋肉も大事です。
脊柱起立筋は背骨付近の筋肉で体を支えています。
テント泊装備で重い荷物を背負って歩くような時に体がブレないように支える役割を担っています。
ここが弱いと上半身がブレて疲れやすくなります。
(私は積極的に鍛えています)
上腕三頭筋(二の腕:上腕の裏側)
ストックを後方に押し出して推進力を得る際に使われます。
いわゆる二の腕で女性の方はタプタプが気になる部位でもあります。
ストック以外にも岩場で両腕で上半身を支えながらゆっくりと体を下ろす際にも使います。
上腕二頭筋(力こぶ)
歩いている最中で使うシーンはありません。
休憩の際にザックを上げ下げする時に使いますね。
登山では重要度が低い筋肉です。
腕橈骨筋(わんとうこつきん):前腕の肘辺りの筋肉
鎖場や梯子で上に登る際に使われます。
ここが強いと精神的余裕を持って上がることができます。
力こぶを使うんじゃないのかよ?
と疑問に思われるかもしれませんが、手の平を上に向けた状態以外ではあまり力こぶは使われません。
鎖場や梯子では手の平を平行にした動作が多いですよね?
その際に使われるのが腕橈骨筋なんですよ。
広背筋
腕橈骨筋と同様です。
登山では梯子や鎖場のような場所で体を上方から下方へ引きつける際に使われます。
あってはならないシーンですが万が一足の踏み場を誤って踏み外した場合、引きつける力があるだけで落下を回避できる可能性が高くなります。
その際に問われるのが広背筋や腕橈骨筋です。
(握力も大事です)
腕橈骨筋や広背筋は登山全体としては使うシーンが多くありません。
しかし、上半身の中では重要度が高い部位となります。
前述した通り梯子や鎖場でのリスク回避、筋力を担保することによる精神的安定剤につながるからです。
ワークアウトで筋肉を鍛えると同時に心肺機能にも刺激を入れることで、登山にも流用できる体ができます。
2:時間・ボリュームを決めてワークアウトをやることで心肺機能を日常的に使う
時間とボリューム決めてワークアウトをやりましょう。
だらだらとやってむ無駄な努力に終わってしまいます。
ボリューム(セット数)を時間内にテンポよくやっていくと、心肺機能も使います。
心肺機能を使うワークアウトと言えばスクワットやデッドリフト などの下半系が思いつきますが、上半身でも時間内でワークアウトをこなすことで脈拍が上がります。
例を出しますね。
広背筋と前腕を中心に鍛えると仮定します。
以下のようなワークアウトを30分でこなします。
(※登山ならこの中で懸垂だけやっておけば十分ですヨ)
加重懸垂 6set → 自重ワイド懸垂 3set → ワンハンドロー 3set → タオル懸垂 3set → ハンマカール 3set → リストカール 3set
総セット数21setですから、テンポよくやらないとこなせません。
心肺機能も使います。
拮抗筋同士の組み合わせでもいいですね。例えば、懸垂 → ディップス → 懸垂 → ディップス みたいな感じです。
下半身や脊柱起立筋のワークアウトでも心肺機能が使われますよ。
3:下半身のワークアウトを必ず週1回はやる
週1で登山をしていれば登山用の筋肉ができるというのは本当です。
とは言え、登山をすることで全地形型に対応できる筋肉ができるのとは話は別です。
特定の地形を歩くだけではその地形に見合った筋肉動作が発達するだけなんですよね。
この際、登山に行けない(或いは気が乗らなくて行かない)時期には全地形型に対応できるようにワークアウトをやっておくといいでしょう。
目安となる下半身のワークアウト頻度は最低でも週1回。
山に行けないなら高負荷と低負荷を分けて週2回やってもいいかもしれません。
下半身のワークアウトは心肺機能を使いますから前述した上半身のテンポよくこなすワークアウトと合わせてると週に3〜4回は心肺機能に刺激が入ります。
登りで使う筋肉の動作は大別して2種類ある
登山をするならスクワットやりましょう、なんてことを聞いたことありませんか?
実はスクワットは特定動作しか強化できないんですよ。
なぜならば地形によって使う筋肉が異なるからです。
緩い斜面を登る場面ではハムストリングス(太ももの裏)を使う
登山では大腿四頭筋ばかり使われるわけではありません。
緩い斜面を歩いている時はハムストリングスを使っています。
いわゆるアクセル筋ですね。
後ろに蹴ることで前進への推進力を得ています。
ここではハムストリングスを鍛える方法をご紹介しましょう。
一つはルーマニアンデッドリフトです。
膝を少し曲げてダンベルなりバーベルを持ってお尻を後ろに突き出すように動作をします。
最近はフレックスベルのダンベルを使ってやってますね。
もう一つはウェイトを使わなくてもできる方法です。
床に寝て膝を立てお尻を中に浮かした動作をすることでハムストリングス、お尻の筋肉を鍛えることができます。
段差がある急登を登る場面では大臀筋(お尻)を使う
段差がある場面では大臀筋や大腿四頭筋を使います。
地面を勢いよく押し出すじゃないですか。
これは筋肉を収縮しながら筋力を発揮している状態です。
登山では登り、特に木の根や岩場のように段差がある場所での動作に近い動作です。
大臀筋を鍛えるならスクワットよりもブルガリアンスクワットをやりましょう。
私はちょっとした台や椅子に片足を乗せてやってます。
ここでもダンベルがあると便利です。
ケトルベルでもOKですよ。
ブルガリアンスクワットの利点は実際に動作に近い動きだということです。
目には見えない筋肉、腸腰筋は足を上げる役割を担っている
脚の筋力が強くても腸腰筋が弱いと足が上がらなくなってきます。
特にアイゼンを着用するような厳冬期や残雪期の登山で顕著。
足が上がらなくてバテちゃうんですね。
腸腰筋を鍛えるなら腿上げ運動をやるのが一番です。
実際に動作にも近い動きですので是非とも積極的にやりたいところ。
ウェイトをつけてやるとより一層効果が強くなります。
例えば冬用のアルパインブーツを履いて腿上げ運動をやってもいいわけです。
最近、私は片足3kgのアンクルウェイト をつけて、チンニングスタンドで下半身を浮かせて腿上げ運動をやっています。
こちらは実際に動作(自重)です。
ちなみに3kgって結構な負荷ですが、登山を適度にやっている人間ならできちゃうんですね。
妻もこのアンクルウェイトで腿上げができちゃってました。
この後、自重でやるととても軽く感じるそうですよ。
下山用の筋肉は大腿四頭筋(太ももの前)を使う
間違いなく下山で一番使うのが大腿四頭筋。
どんなに重いスクワットができても下山で使う種類の筋肉は手に入らないでしょう。
その理由は筋力の出し方が根本的に異なるからです。
下山時はブレーキをかけながら歩きませんか?
ブレーキをかけつつも力がふわっと抜けてしまわないように筋力を発揮していますよね。
これは筋肉を伸ばしながら力を出している状態なんですよ。
鍛える方法は2つあります。
一つはマシンを使うことです。
レッグエクステンションでネガティブに下ろす(ブレーキをかけながら下ろす)動作をすることで下山時に使う筋力の出し方を擬似的に作ることができます。
しかし、マシン環境(ジム)が近くにない人もいますよね?
そこでできるのが自重を使ったシシースクワットです。
ただ、登山の下山とは別物ですね。
急登の下山は3時間程度の運動を持続しますからね。
下山用の筋肉は登山で鍛えるのが一番だと感じます。
脛、ふくらはぎは実践(登山)でいいんじゃないかな
ふくらはぎや脛も気が向けば片足でカーフレイズやトゥーレイズをやったりもしています。
ただ、やらなくても回数は落ちないところを見ると筋力は維持できているようです。
あくまでも刺激を入れる目的でやるのがいいかもしれません。
脛やふくらはぎも下山用の筋肉同様に実践で使うのが一番ですね。
4:脊柱起立筋を鍛えておこう
荷物を長時間背負って歩くには、胴体がブレない筋力が必要になります。
そのためには背骨に付いている筋肉である脊柱起立筋を強化しておくこと。
私は重い荷物を背負って長時間歩くことがあるのでデッドリフトで脊柱起立筋の筋力バッファを備えるような鍛え方をしていますが、自重でも鍛えることができますよ。
それは自重でブリッジをやることです。
道具なんて要りません。
5:実用的な上半身のワークアウト、懸垂とディップスをやる
上半身の動作は引く・押すの2種類に集約されます。
単純ですね。
そのワークアウトが懸垂とディップスです。
登山のことを想定するならパラレルグリップの懸垂をやるといいですよ。
考えてみてくださいね。
梯子や鎖場であなたの手はどんな向きで握っていますか?掌同士が向くような握り方ではないですか?
パラレルグリップの懸垂は実際の動作に近い筋力を強化するんです。
実際に自重で何年もパラレルグリップの懸垂をやってきましたが、腕橈骨筋が強くなりましたね。
と同時に広背筋も強くなりますよ。
懸垂はやらなくても大丈夫かもしれないけど、筋力を担保しておくことで、万が一のリスク回避に繋がります。
例えば、梯子で足を滑らしたけど筋力があって掴まることができるとかね。
ディップス動作も登山で役立ちます。
ストックを後方に押し出して推進力を得る時、それから岩場などで上半身を支えながら体をゆっくりと下ろす時です。
公園でもジムでもいいのですがチンニングスタンド があると便利。
まとめると
ルーマニアンデッドリフト 、ブルガリアンスクワット、シシースクワット、腿上げ運動、懸垂、ディップスの6種類のワークアウトをやることで登山の場で役立ちます。
ワークアウトは大事です。
是非、日常生活の習慣にしてみてはいかがでしょうか。
それでは。
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